「ど、どこいっちゃったのかなあ…!」
小さなボタンひとつ求め、校内や寮と思い当たる所をあちこち探してみたけれど、それらしいものは一切見つける事が出来なかった。今日お昼に那月くんとご飯食べてたときには確かにあったのに…!ストラップのダッフィーにつけてたもん!首に巻いた赤いリボンと一緒に…って!
「(おとやに!見られちゃった!)」
ど、どどどど、どうしよう!今更だけどどうしよう!大事にするねって言ったって、まさか常に持ち歩いてるだなんて思ってなかったよねおとや…!ど、どうしよう気持ち悪いとか思われちゃってたら!いやおとやに限ってそんなことは…。で、でもでも!…そもそも貰った物をなくすだなんて、やっぱりゲンメツされちゃう!むしろ私もボタンなくしちゃうとか悲しい!
「(……どうしよう…)」
呆然と廊下に立ち尽くしていると、「あれ。じゃん」と聞き慣れたクラスメイトの声が後ろから投げ掛けられた。振り返るとそこにはやっぱり同じSクラスの来栖くんが不思議そうな顔をして立っている。すると私の顔を見て驚いたらしい来栖くんはぎょっとした様子で「えっお前、何泣きそうな顔してんの!」と言ってくるから、そこで私は初めて泣き出しそうな顔をしていることに気が付いたのだった。だけどそんなこと、今の私にはどうでもいい!
「来栖くん、あ、あのね!ボタン!ボタン見なかった!?」
「ボタン?どっか取れたのかよ」
「うん!ストラップに付けてたのが取れちゃったみたいなの…!」
「ふうん。まあ俺はそれらしいもの見てねえけど。でもさあ、サオトメイトにもボタン売ってんじゃん。適当に他のボタン付けとけば良いんじゃねえの?」
「それじゃだめなの!ぜったい!代わりなんてないの!」
突然大きな声で否定した私に驚いたらしい来栖くんは、その勢いに押されたのか「ご、ごめん…」と謝罪の言葉を送って来た。そこで私もようやく我に帰って慌てて謝り返す。そうして少し沈黙を置いてから、来栖くんが「そんなに大事なものなのか?」と尋ねてきたから、私は素直にこくりと頷いた。
「人にね、貰ったものなんだけど、私にとってはお守りみたいなもので…。あっ、そんな大事なものなら無くすなよって話なんだけど…!」
「…ふうん、事情は分かった。じゃあ俺も探すの手伝ってやるよ」
「えっ!ほんと!?」
「ああ。どうせ課題も提出し終わって暇だし。だから、どんな形のやつか教えてくれよ」
「うん!ありがとう!えっとね…。………あ。えーっと…。………」
思ってもいなかった申し出に素直に喜んでしまったけれど、ど、どうしよう。なんて説明すればいいんだろう。確かにボタンだよ、ボタンなんだけど、そんじょそこらでまとめ売りされているような類いのボタンじゃなくて…。えっと…。…………。中学の卒業式のときに貰ったおとやの第2ボタン探してるんですなんて!言えない!!
「や、やっぱり大丈夫!1人で探すよ!」
「え?でもお前、この広い校内1人で探すって無理あるだろ」
「ううん大丈夫!大丈夫だから!ありがとね来栖くん!…そ、それじゃ!」
「え、あ。おい!」
だーっと猛ダッシュでその場を去る私に「ほんとに手伝わなくて平気なのかー!?」となんだか申し訳なくなってくるくらい優しい言葉を叫んでいる来栖くん、ごめんなさい!だっておとやのとか第2ボタンとは言わずとも、学ランのボタン探してるって知られたら、私恥ずかしすぎて爆発しちゃう自信があるんです!
「(しかもお守りって言っちゃったし!)」
は、恥ずかしい!恥ずかしいよ私!どうしよう!ボタンはなくしちゃうし、来栖くんには怪しまれちゃうし、なんかもうぼろぼろだよ…!…と、とりあえず、おとやには気付かれないように見つけないと!…だけど、どこを探せばいいんだろう?また振り出しに戻ってしまったことに気付いた私は、大人しく来栖くんにも手伝ってもらえばよかったのかな、なんて今更なことを考えたりした。
20110917 次から2話くらい、さらっと回想てことで中学生編いきますよー