「かーわいいー!」

やたらテンションの高い那月の声がする。どうやら可愛いものには目の無い那月の好みにドンピシャなものを発見したみたいだ。昼時でがやがやと賑わう食堂でこれほどもはっきりと声が聞こえるのは、那月のテンションと比例していつもより声が若干高くなっていたからか、それとも声の大きさから言ってわりと近くから発せられたからなのかな。あ、そうだ!俺今ひとりだし、那月のとこでお昼食―べよっと!那月どこにいんだろ!

きょろきょろと声の主を探していると、ふとを発見した。あっラッキー!なんか嬉しい!いいことあるかも!なんて思いながら見てみると、彼女は好物だというカルボナーラを食べている。そして何やらその幼馴染は向かい側に座る誰かと雑談をしているみたいだ。凄く楽しそうだなー!仲いい友達できたんだ…って違うあれ那月じゃん!なんで!呆然とする俺に2人は気付いたらしい。ひらひらと手を振って声を掛けてきた。

「あれ。音也くんもお昼ですか?」
「1人?おとやも一緒に食べようよ!」
「え?ああ、うん」

あれ。なんだこれなんだこれ。こんなさも当然とでも言わんばかりのナチュラルな展開の発端に突っ込む隙すらない。なんで!と那月が!一緒に!いるの!2人接点なんてあったっけ!?いや、翔となら分かる!分かるよ同じクラスだし!でも那月とはクラス違うよね!?なのになんでそんな親しげなの!?しかも2人共同じの食べてるし!(俺ラーメンだよ!俺もカルボナーラにすれば良かった!…て、俺パスタ、フォークにくるくるって巻きながら食べられないんだけど!そもそもラーメンのほうがすきだけど!)

そもそも翔繋がりで知り合ったとしてもあまりにも仲良くなりすぎだよ!あーもう!なんかもうわかんなくなってきた!色々なことが頭を駆け巡る中、とりあえず那月の隣の席に着席する。そうしてずずっとラーメンをすすりつつ、じっと2人を観察することにした。今の俺はどこか恨めしい目をしているかもしれないけれど、楽しそうに話し込んでいる2人は気付きもしない。むしろ中断されていた話の続きをし始めたみたいだった。

「いやあ、本当に可愛いですよねえ…!見てて惚れ惚れします」
「えへへ、ありがとー!」

いやいやいやいやうんそりゃは可愛いよ可愛いけど那月そんなキャラだっけ若干レンとキャラ被ってない!?呆然とする俺を尻目に(いや2人共別にそんなつもりじゃないんだろうけど)着々と進んでいく会話。もうラーメンなんて食べてらんないでしょこんな状況で!麺伸びるより大事な事あるでしょ!ま、まままま、まさかこんなところで隠れライバルがいるなんて…!トキヤでもレンでもなくまさかの那月っていうのはダークホース以外の何物でもないよ!

「僕、本当にだいすきなんです!」

えっ何そんなさらっとすきって言っちゃうの!?俺とずっと一緒にいたのにそんなこと一回も言えたことないんだけど!那月目すっごいキラキラしてるけど!?唖然としすぎて完全に石と化した俺に、笑顔の幼馴染が「うん私も!」なんて同意の声が聞こえてきたんだけど何この追い討ち!しかもこれカップル成立の瞬間に立ち会っちゃったの!?(みんな忘れないで恋愛絶対禁止令破ったら即退学!)しかも水飲んでたときにこんな展開起こるもんだから完全にむせちゃったじゃん! の前で咳する俺かっこ悪い!水!変なとこ!入った!ちょっと苦しい!

「えっ!おとや!?だいじょうぶ!?」

突然隣でむせ返ったことにびっくりしたらしいは、心底心配そうに背中をさすってくれた。相変わらずゴホゴホ言ってる俺に、「だいじょうぶ?だいじょうぶ?」なんて優しい言葉を何度もかけてくれるものだから、俺思わず一生むせたままでいいよなんて訳の分からない事を一瞬考えてしまう。いやそんなのかっこ悪すぎだけど!「…っ、だ、大丈夫…!」ようやくまともに話せるようになった頃にやっとの思いで返したけれど、心配性なはまだ不安そうな顔をしている。

「ちょっと水一気飲みしたら変なとこ入っちゃっただけだから!平気平気!」
「そ、そうなの?」
「音也くん、大丈夫ですか?」
「うん!全然へーきだって!」

どうしよう2人の優しさが逆につら。こうしてみると2人はなかなか似ているところがあるのかもしれない。優しいとことか。…でもそれとこれとは関係ない! 俺だってずっとのこと見てきてずっとずっとすきだったんだ!誰よりのこと知ってる自信ある!だからこんな不意打ちな展開やなんだって!那月はいい奴だって知ってるけど、の居場所は俺の隣がいい!他の奴じゃ嫌だ!俺の隣で笑っててほしい!だから伝えなきゃと衝動的になった俺は、他に何を考えることなくずっと胸の内に秘めいた思いを吐き出した。

「──俺も!俺もすきだよ!ずっと前から!」

言った!言えた!やっと!突然話に乱入するように宣言したら、予想はしていたけれども那月も驚いてかぽかんとした。うんそりゃそうだよな!ごめん那月!でもやっぱり言わずにはいられなかった!ていうかここ食堂だったどうしよう本当ごめん!心の中で土下座する勢いで詫びていると、俺の内心とは対照的にがきょとんとした顔で口を開いた。

「…そ、そうだったの…?全然知らなかった!早く言ってくれればいいのに!」

えっ早く言ってくれればって、えっ?どゆこと?もしかして俺にも脈ありだったの?行動が遅すぎってこと?でもはあまりにもけろっとした顔で言ってくるのはなんで。えっえっ。なんかおかしい何かがおかしいそんな気がする俺何か間違った!?どこ!?どこを!?慌てて回想をして間違い探しをしているところで那月がどこか嬉しそうに言う。

「うわあ!奇遇ですねえ。音也くんもすきだったんですか。ダッフィー」

……………えっダッフィーって何?なんか、だーいぶ前との会話で出てきたことある気がするけどなんだっけダッフィーって何者だっけ。ていうかここでなんで出てくるのダッフィー訳がわかんないんだけど!展開についていけず首をかしげている俺を不思議に思ったらしいは、「?だから、すきなんだよね?ダッフィー」と小首をかしげて聞き返してくる。いや俺がすきなのはダッフィーじゃなくてなんだけどいやだからむしろダッフィーってなんですか!

「…………えーっと…?」

なんとなく話が読め始めた気がしないでもないけどいまいち頭がついていけない。きっと俺の頭上には分かりやすくハテナマークがいくつも浮かんでいるような顔をしているに違いない。そんな俺にますます疑問を持ったらしいと那月は顔を見合わせ、後者が親切に「ほら、これですよこれ」となにやら話題の花を咲かせたきっかけになったのであろうのケータイを指差した。そこには可愛らしいくまのストラッ…プ……?…………………えっ。…全てを理解した瞬間、顔が猛烈に熱くなった。

「俺無理もう無理穴があったら入りたいむしろ埋まりたいこれはない!!」
「えっ、急にどうしたのおとや。何か嫌な事でもあったの?」

心配そうに尋ねてくれるの顔すら直視出来ない。嫌な事っていうかなんていうかね、うん。ちょっと逃げ出したい!


20110730 「まさかのwwwダッフィー落ちww」ってオン友に突っ込まれた(´・ω・`)←