「そういえば昨日、先輩に会ったんや」
練習後、部室でユニフォームから制服に着替えている最中、ふと思い出したように謙也さんが言った。部長に話しかけたその言葉が俺の耳に入ってきたのは偶然だったのか、それとも無意識にアンテナを張っていたのか分からんけども、聞こえてしまった手前なんとなく気になってしまう。ちらりと盗み見るように先輩らを見てみれば、2人は隣に並びながらワイシャツのボタンを閉めていた。部長は挙げられた人物の名に、懐かしそうな顔をする。
「先輩って、女テニの部長やっとった先輩か。久しぶりやなあ。どこで会ったん」
「ああ、コンビニの前でばったりな。そんとき飴買うたらしくて、帰り際『全国行くんやろ気張りやー』言うて貰ったわ。俺また餌付けられたんで。相変わらず子ども扱いや」
「先輩相変わらずやなあー。全然変わっとらん」
「ほんまや。…いつになったら俺のこと自分と対等に扱ってくれんねん、ええ加減へこむわー」
そう言って溜息をつく謙也さんに、そういえばこの人は先輩に憧れとったなあと思い出す。するとこの先輩はまた何かを思い出したようで、そういえば・と俺のほうを見たかと思ったら、こちらにも聞こえるようにボリュームを上げて「先輩、財前のこと気にかけとったで。光ちゃん、ちゃあんと部に馴染めとるかーって」と話を振られ、俺は明らかに顔を歪めた。部に馴染めとるかって、子どもかっちゅうねん。
「…余計なお世話っスわ」
そう坦々と返すと、先輩2名は「そういうと思たわー」とまるで予想通りだと言わんばかりの反応をしたと思ったら、部長は何か思い出すことがあったのか、しみじみとした顔をしている。「先輩、財前のこと気にかけとったもんなあ。何かって言うと『光ちゃん大丈夫か浮いとらんか、馴染めとるかー』って」「だから、それが余計なお世話なんスわ」「先輩も途中で転校してきたみたいやし、四天宝寺の空気に馴染めんっちゅう仲間意識があったんやろなあ」うんうん、と妙に納得したような顔で頷きつつそう言う謙也さんに再度、余計なお世話っスわと言いそうになった。が、どうやらそうせずともしっかり顔に出ていたらしい。部長が苦笑していた。
「…あ。そんでな、なんでもその先輩が、」
まだ続くんかい。謙也さんどんだけ先輩のこと好きなんすかええ加減にしてください。と、思いつつやはり口にはしない。面倒だ。ふと制服のズボンに入れっぱなしにしていたケータイを見てみると、なにやらチカチカと点滅している。誰やねんと思うより先に指を動かす。どうやらメールらしい。さらりと流し目で大雑把に内容を確認すると、深く考えずカチカチとキーを押す。顔文字も絵文字も無い素っ気ない返信を作成すると、そのまま送信。受信してを確認してから30秒と経っていない。もはやこれは一連の動作と化していた。
早いところ着替えてとっとと行かねばと、カッターシャツのボタンを閉める手を急ぐ。そうして半ば強引にユニフォームをテニスバッグに突っ込み肩に掛け、そのまま誰に言うでもなく「お疲れっした」と口にしてとっとと汗臭い部室から去ろうとドアに手を掛ける。そしてそこで聞こえてきた先輩らの会話。どうやらさっきの「先輩が、」というものの続きらしい。先輩2人は相変わらず着替え終わってはいなかった。
「彼氏できたらしいねん」
「へー、流石高校生やなあ」
そこ中学とか高校とか関係ないやろと思いつつも、言うと面倒なので黙っておく。加えて「先輩、やっぱ大人やなあ」とか言っとるし、部長は変なところでものすごくおかしい。要するに部長は変やと思う。エクスタシーとか訳分からんことも言うし。そもそも毒手設定とかなんやねん。突っ込みどころ満載すぎて放置しているけども。
大体、中学生で付き合っている奴なんてごまんといるし、反対に高校生だろうが付き合っていない奴もいる。つまりはそういうことだった。けれども周りにそういう奴がいないのがたたってか、彼らは彼氏がいるイコール大人という奇妙な方程式が出来上がっているらしい。部長は変なところで子どもやわと思いつつ、そのままぶっきらぼうにドアを閉める。外の空気が心地良かった。
★
「昨日、謙也さんにおうたそうですね」
うっかりズッとストローの音を立ててしまった100パーセントオレンジジュースは相変わらず甘酸っぱかった。ふと目の前の光ちゃんを見てみると、もくもくとポテトをつまんで静かに頬張っている。Lサイズのポテトを2人で半分個するべく赤いケースから無造作に出されたそれは、トレーの上に散乱していた。そして光ちゃんは、先ほどからカリッと揚がったものではなく、ちょっとしなっとしているポテトばかりを選んで食べている。どうやら彼は柔らかくなっているポテトがすきらしい。
「光ちゃん、へにゃってしてるポテトばっかり食べないでよ。私もそっちのがすきなんだから」
「ならはよ食べたらええんちゃいますか。早いもん勝ちっすわ」
まあ。このポテト買ったの私なのにーとぐちぐち言いつつ、けれど確かに「好きなだけ食べてねー」と最初に言ったのは私だったことを思い出す。まあ、そのために普段マックに来ても絶対に頼まないLサイズをチョイスしたわけだけれど。
「…で、おうたそうですね」
念を押すかのように向かいの席に座る彼氏くんは、二度繰り返し言った。大事なことなので二回言いましたってやつ?それともさらりと流されて話題を変えられたくなかったんだろうか。ちらりと寄越す彼の目は真面目なものだから、なんだかやりづらい。なんですかその目は。「会ったって言っても、偶然、コンビニ前でだけどね」とりあえず、偶然、ということを強調して言ってみたけれど、それでも光ちゃんはむっとした顔をした。「飴やったって、ほんまですか」気になるのはそこか。ほかにないんかいと大阪弁で突っ込んでやりたいけれど、どうせまたイントネーションが違うだのなんだの言われるのが目に見えているからやめておこう。
「飴って、注目するべきはそこなの?」
だから代わりに標準語で言ってみる。やっぱり中学1年の終わりまで生まれてこのかたずっと生活していた東京の喋り方が根強く残っているみたいだ。大阪に引っ越してきてもう3年目になるというのに、未だに関西弁は話せない。「他にあるでしょ。ほんまに偶然会っただけなんですかーとか、なんで俺に報告しないやねんとか」「中途半端な大阪弁はやめてください発音も何もかも間違ごうてますわ」いつも通り冷静な彼は、いつも通りの口調で返してきた。そしてまた坦々と言う。
「俺以外の男に奢らんといてください」
「それって、光ちゃんには奢れってこと?」
「そうです」
「ええー」
なにそれ俺様ーと不満げに言ってやると、光ちゃんは「何か文句あるんですか」とやっぱりけろりとした顔で返してくる。
「将来生活費は全部俺が出すんやから、これくらいええんちゃいます」
「…………………」
「先輩、めっちゃ間抜けな顔してますわ。突っ込んでくださいよ。今こそ、なんでやねんって言うとこでしょ」
そう言って、光ちゃんは間抜けな顔と称された頬をふにっとつねってくる。ポテトをつまんでいなかった左手で。だけど引っ張ってはこないから全く痛くはない。相変わらずほにゃほにゃと緩む頬は直らない私に、光ちゃんは遂に頬を開放する。代わりにそのままくしゃくしゃっと頭を撫でられた。お陰で髪は荒れ放題だ。だけど「あほちゃいます」って顔しながら頭を撫でてくれる彼がすきだったから、私は何も言わない。むしろニコニコしてしまう。それを見て光ちゃんは、なんだか呆れたように口を開いた。
「…なんでも先輩、格好いいらしいっすわ」
「へー」
「落ち着いてて面倒見も良くて、ちょっとクールで、人望もあるって。前言うとりました」
「謙也くんが言ってたの?なあんだ、もっと飴あげとくんだったなあ」
「だから、よくもまあこんなに人を騙されるもんやと関心しました。事実無根すぎて、笑いを堪えるのに必死っすわ。先輩、詐欺師になれるんちゃいます?」
「こらこら、何を言っているんだね君は」
遂に光ちゃんに突っ込んだ私は、その勢いでポカンと優しく彼の頭にチョップを食らわせてみる。勿論力も勢いもない私の右手から繰り広げられる攻撃は全く痛くなかったらしく、光ちゃんは全く気にしない素振りで続ける。
「だって先輩、自分勝手だし、慌てると全く周り見えんし、子どもっぽいし、甘えただし、頭撫でるとあほみたいにニコニコへらへら笑うし。どこがクールなんすか。むしろ尻尾振ってる犬ちゃいますか」
「うん。よく懐いているでしょう、光ちゃんに」
「こんな犬、飼いとうないです。可愛いないですし」
「えー。ほんとに?」
「…嘘です」
そう言ったかと思ったら、へにゃりと力が無い長いポテトをもふっと口に突っ込んできた。照れ隠しかな、可愛い。そのままもごもご頬張っていると、光ちゃんは喉が渇いたのかコーラに手を掛けた。ごくんと飲み込むたびに、喉仏が動く。それを見ながら私もオレンジジュースを一口飲んでみる。ちょっと氷が解けて薄くなっていた。
「だから、ええ加減俺のこと『光ちゃん』呼ぶのやめてください」
「なんで?いいじゃん光ちゃん。可愛くて」
「可愛くなんてなりとうないですわ。普通に『光』でええやないですか。せめて『ちゃん』やのうて、くん付けにしてください」
「えー」
自分の中でなかなか気に入っている「光ちゃん」という響きを手放したくなくて、私はまた不満げな声を挙げる。別にいいじゃん光ちゃんで、という文句をぶつけてみると、分かりやすく彼の眉間に皺が寄った。どうやら光と呼ばれたいらしい光ちゃんは、呼び名に不満があるようだ。こんなやりとり、今までも何度も繰り返してきたから分かる。
「あっ!光ちゃんまたピアスの数増えた!また開けたでしょ!」
「話逸らさんといてください」
「逸らしてない!大事な話だよこれは!由々しき事態だよ!」
そう半ば叫ぶように言って耳たぶに触れると、彼は不機嫌そうな顔をしながらも拒絶はしない。どうやらピアスの話題になるといつもなることだから気にしてはいないようだった。むしろ、また上手く話題を替えられてしまったと拗ねているようにも取れる。むしろそうなんだろう。そんな彼が可愛くて仕方がない。だけど先程と明らかに違うことは、私までもが、みるみるうちにしかめっ面になってしまったということだった。
別に彼が不機嫌そうにしているのを見てもやもやしたわけではない。ただ単に彼の右耳たぶに先週までなかったはずの2つ目のシルバーピアスが輝いていたから、私はむくれてしまったのだ。しかもなんかリング式のやつだし。ピアスを開けていない私にはその正式名称を知らないけれど、とりあえずイヤリングの類いではなく、正真正銘のピアスであるということは明らかだった。
「私、ピアスあんまり好きくない。いっぱい開けてるとちゃらく見えるよー不良だよー」
「千歳さんも開けとりますけど」
「千歳くんはいいの。左耳にひとつだけなんでしょ?まあセーフ。でも光ちゃんだめなの。ていうか開けすぎ」
「訳分かりません」
この会話も、一体何度繰り返してきたことだろう。もはやテンプレートとなってしまったこの話題は、飽きることなく何度も何度も繰り返され続けている。別に面白い話題でもないはずなのに、私達はいつも繰り返しているのだ。なのにどちらも「この間もこの話したよね」と言わないのは、この無意味なリピート行為がいつの間にか一種のコミュニケーションと化して来たからなんだろう。おはようって言ったらおはようって返すみたいに。
そんなことを思いつつピアスを眺めていると、ふと出会ったばかりの頃の光ちゃんを思い出した。まだ四天宝寺に入学したばかりで、ピカピカの1年生だった光ちゃん。今でもすぐに思い浮かべることが出来る。ピカピカの1年生、と言ったら可愛らしい印象を受けるけれど、実際はいつも無愛想で、何事にも興味がないようで、いつもつまらなそうな顔をしていて、四天宝寺独特のノリに全くついていけない、そんな1年生だった。だけどそこがなんだか可愛くて、放っておけなかったんだ。そんなことを思い出して、はあ、と溜息をつく。
「前は可愛かったのになあ。ちっちゃくて、男の子って感じで」
「…………………」
「それがどうしていつのまにか、すっかり男になっちゃって。何その色気。やめてください。どっから出てきたの。1年のときは私と背も同じくらいで顔も可愛い感じだったのに、どこに隠れてたの。この1年の間に何が起きたの」
「それは、先輩はそうやって俺をとことん年下扱いするからですわ。姉さんぶらんといてください。俺、先輩の弟になったんとちゃいます」
きょとんしながらも光ちゃんをじっと見てから、何気なく彼の右耳に増えたピアスを眺めて、そしてまた彼の目を見た。じゃあ、ピアスを増やすのは2つも年下な君の、私に対する精一杯の大人の背伸びなのかい。随分と可愛いことをしてくれるなあと思ったら、「ふふふ」となんだか気味の悪い笑い声が出てしまった。いけないいけない。案の定「先輩きもいっすわ」と言われてしまった。地味にへこむ。だけど気にしない。やっぱり光ちゃんは可愛かったから。
「よーしよし」
なんだか嬉しくなって、まるでよくできましたと犬を褒めるみたいに、光ちゃんの頭を撫でる。すると彼は明らかにしかめっ面になってしまう。まるで子ども扱いするなと言うような顔だ。しかも、今まさに年下扱いするなと言ったばかりなのに、と。光ちゃんは私の頭は平気でぐしゃぐしゃと撫でるくせに、自分がされるのは嫌いらしい。「やめてください」そう不機嫌そうな声で光ちゃんは言った。
★
「あれっ、先輩や」
ふと聞きなれた声が聞こえてきて、なんや嫌な予感がすると思いつつ声のするほうを見てみると、自称・難波のスピードスターのくせにやたら着替えるのは遅い謙也さんと、何かと言うとエクスタシーと言ってウケを狙おうと試みている部長の姿があった。…瞬間、俺が嫌な顔をしたのを2人は気付いただろうに、あえてそこをスルーして「昨日ぶりですねえ」とやたら上機嫌に話しかけてる謙也さんにいらっとしつつ、無言のまま1人もしゃもしゃとすっかり冷え切ってしまったポテトを頬張ることにする。あまりおいしくない。
じろりと恨めしげに送る視線も、彼にとってはどこ吹く風らしい。隣のテーブルが空いていたことを好機と捉えたのか、その椅子に腰掛けた。しかも先輩が座っている側の席。やっぱり上機嫌で。そんなことをしたものだから、部長も謙也さんの向かい、要するに俺の隣の席に腰掛けることになったのは言うまでもない。そうこうしているうちに、難波のスピードスターは誰よりも先に先輩に声を掛ける。
「なんや、財前と逢引きですかー?」
「ふふ、いいでしょう」
そう嬉しそうな顔をする先輩に、謙也さんは「どんだけ財前のこと気に入っとんのですか」と突っ込んだ。少なくともあんたよりはずっと気に入られてますわと心の中で突っ込みつつ、やっぱり無言のまままたポテトを口の中に突っ込む。ひたすら食に走るしかない。「ゆっくり食べて長居して、いっぱい話そうね」とずる賢く言った先輩の言葉を頭の中で繰り返し再生しながら。
「せや、先輩。付きおうとる彼氏さんて、どんな奴なんです。同じ学校の人?」
どんなも何も、今あんたの目の前にいる俺ですけど何か。もしゃもしゃと冷えたポテトを消化しながら、心の中で毒気づいてみる。ていうか、どんだけ食いつくんですかそこ。謙也さんええ加減にしてください。隙あらば入ってやろうと言う気がぷんぷんするんですけど。どうやら昨日久しぶりにあって、忘れ去れていた憧れの感情が一気に蘇ったらしかった。部長も、「謙也の奴えらい食いつくなあ、よっぽどショックやったんやろか」と小さく呟くように言う。…俺もそう思います。一方の先輩と謙也さんは、相変わらずの話題を継続させていた。
「どんなって、うーん…謙也くんもよく知ってる人だよ。言ってなかったっけ」
「えっ。まさか、うちのテニス部の奴っちゅうことですか」
「うん。…あれ?ほんとに言ってなかったの?てっきり向こうが言ったんだとばかり」
向こう・と称された俺は、最後のフライドポテトを口の中に放り込んでいたところだった。ベタつく手をペーパーで拭いてそのまま折り畳み、数秒前までポテトが入っていた赤いケースの中に収納する。そんな俺とは対照的に、謙也さんは酷く動揺していた。
「テニス部って、えっ。じゃあ先輩より年下っちゅうことですか!」
「うん」
「い、意外や…一体誰…。!ま、まさか、白石…!」
「なんでやねん。ちゃうわ」
呆れ顔の部長は、自分にまで八つ当たりをしないでくれと顔に書いてある。頬杖を付きながら、他に話すことないんかいなと言わんばかりに向かいに座っている同級生に目をやっている。じゃあ誰や誰や一体誰やと、まるで犯人を捜す刑事のように先輩を問い詰める謙也さんに、少し落ち着けと言ってやりたい。溜息をひとつついて、俺も先輩に声を掛けた。
「先輩。どんな奴か、はっきり言ってやったらええんちゃいます」
「え。なに?光ちゃんまで」
自分こそ今まで言わなかったくせにと先輩の顔に書いてある。だけど謙也さんのみならずテニス部に言わなかったのは、別に恥ずかしかったからとかそういうんじゃなくて、こういう事態が起こって面倒だと思ったから。ただそれだけだった。部長は「そうなんかー良かったなあ」とさらりと流しそうだが、ユウジ先輩や小春先輩はそれこそネタにしそうで実にうざったそうだったし、何より先輩に淡い恋心を抱いていた謙也さんは非常に面倒臭そうだった。から、何も言わなかった。それだけ。第一、誰にも先輩と俺の関係性について聞かれなかったし、答える義理もないでしょう。そんな俺らの事情を知らない謙也さんは、「財前の言う通りや。教えてください」とせがんでいる。
「えー?なんか言いにくいなあ…」
顔をしかめ、ちらちらとやってくる先輩の視線に気付かないフリをしつつ、残り少なくなっていたコーラの最後の一口を飲み込んだ。中身を失った紙のコップ内は、ジューっというストロー音を出している。それを確認してから、トレーの上に戻した。一方の先輩はというと、そうだなあ、と考えた素振りを見せたのち、やっと重い口を開いた。
「愛想のない子かな。いつも不機嫌そうっていうか、なんか面倒くさそうな顔してる」
「不機嫌…。え、そんな奴のどこがええのですか」
俺には分からんと言わんばかりに口を開いた謙也さんに、先輩は「だって本当のことだし」とけろりと言い放つ。…………。「…先輩、他に言うことないんスか」と突っ込んでやると、彼女はうーんと考え始めた。
「えーっと…じゃあ、大人扱いされたくてピアス開けちゃう子?それとも、自分の先輩と話してるの見てポテトやけ食いする子?」
「分かってたならやめてほしいすわ」
「だって可愛くて。つい」
「だから可愛い言わんといてくださいって、何回言うたらええのですか」
「いいじゃん。彼女の特権」
そう言ってにこっと笑う先輩に、遂に空気の読めない謙也さんも話が繋がったらしい。口をぽかんと開けて間抜けな顔をしてフリーズしている。部長は部長で落ち着いていて、「謙也、あほみたいな顔になっとんでー」と突っ込んでいるけれど。
「先輩、ポテト終わりました。先輩もジュース終わったんでしょ。これで長居は出来ません。出ましょう」
そう言って半ば無理矢理トレーを持って立ち上がると、先輩は「えーっ私全然食べてなかったのに!光ちゃんずるい!」と不服の声が飛んでくる。だから、早いもん勝ちっすわ。そう言ってとっととトレー返却口に向かうと、先輩は慌てた声で「あーあー待ってよ光ちゃん!」と俺の背中を追いかけてくる。そこでようやくフリーズ状態から開放され我に返ったらしい謙也さん。「な…な……」と震える声を発している。遂に頭までおかしくなったんやろか・と思いつつ、先輩を引き連れ店を出る。…瞬間、「なんでやねん!」という、謙也さんの大きなツッコミが聞こえた。
20111029 本命は白石なのに財前のが書きやすい謎((^q^))そして書き終わってからただのバカップルだということに気が付いた。そしてエセ関西弁ですみません!