突然の展開に完全に度肝を抜かれてしまった私は広間に足を踏み入れることが出来ず、相変わらず「話を振らないでください」と言わんばかりに身を隠してばかりいる。「姉ちゃんどこ行っとったんー!ワイ、めっちゃ探しとったんやでー!」と妙にはしゃいだ金ちゃんの人懐こい声が中から耳に入ってくるというのにそれに答えられずひたすら沈黙を守るしかない。聞こえているけれど聞こえない、そんな不思議な感覚に陥っているほどにきっと動揺している。だって私、さっきからずっと目は固く瞑ったまま俯いてばっかりだもん。ぎゅっと握りしめる右手に力が入った。

…トンネルの向こうは不思議な街でしたというのはジブリ映画のキャッチコピーで聞いたことがあるけれど、まさか広間の襖の向こうはお笑いの世界でしたなんて展開初めてだ。しかもそのコントのノリを(初対面の男子に)振られては、どう反応したらいいのか分からない。そんな私を察してか、白石くんは笑いの国を建国してしまった2人組に溜め息交じりで柔らかく注意をした。

「…あんなあ小春にユウジ。漫才もええけど、今は準備するんが先やろ。なんや銀しかやっとらんやんみたいやし、ちょっとは手伝わな」

この白石くんの台詞から察するに、どうやら突然コントを開始した2人組は『コハル』と『ユウジ』と言うらしい。白石くん同様聞き覚えのある名前だから、やっぱりこの人達もおばあちゃんがよく話しているテニス部のレギュラーの人だったみたいだ。それにしても、コハルってなんだか女の子みたいな名前なのに男子だったんだ、なあ。てっきり女子マネージャーさんか何かかと思っていたのに。…なんだかちょっとショックかもしれない。色んな意味で衝撃だ。少し複雑な気分になっていると、妙に特徴のあるイントネーションで繰り広げられる声が耳に入ってきた。コハルくん…訂正、コハルさんだ。

「んもうー。蔵リンてば真面目やねえ。でもそんなところもときめきロックオン!」

…妙に生き生きとしていると言うかはしゃいでいると言うか、でも冗談というにはしっくり馴染んでいるように聞こえる辺り、コハルさんてもしかしてもしかしなくても、少し個性豊かな人なのかな。やっぱり四天に通ってるってだけあってキャラが強いというかなんというか。でも意外と私みたいに男子が苦手なタイプからしてみたら、逆にこういうちょっと女性的な雰囲気がある人のほうが話しやすいのかもしれない。キャラは強烈だけど、人は良さそうだし、穏やかそうだし。なんてぼんやり頭の片隅で考えていたまさにそのとき、とんでもなく馬鹿でかい声が飛び込んできた。

「こおらああ小春うううう浮気かー!死なすどーっ!」
「(えっ!死…死!?)」

またも訪れてしまった突然の展開に私の頭はやっぱりついていけないようで、響き渡ったその怒声に思わずびくうっと大きく肩を震わせてしまった。な、ななな、なんか今、し、しなすって、物騒な言葉が聞こえてきたんだけど…!普通に日常生活を送っていたら絶対に出ないような物騒な言葉が!ぼ、ぼぼぼぼ、暴力的…!

「(こ、こわいよう…っ!)」

やっぱり男子は怖い!こわい!まるで現実から逃げるようにより一層固く目を瞑る。きっともう何も見ていられない。そしてそんな恐怖を少しでも緩和したくて、必死になって目の前の真っ白い布にすがりつくように身を隠した。今この瞬間暴言を吐いた彼に姿を捕えられたら、きっと私、ころされちゃう。そんな妙な確信が生まれたせいで、私はぎゅっと瞳を閉じたまま一歩も動くことが出来ないでいる。右手になぜか感じる優しいぬくもりが妙に私を安心させた。

「……いや、せやから。ユウジも小春もええ加減にせなあかんやろ。めっちゃ怯えとるやん」
「(!し、しらいしくん…!)」

まるで私の内情を全て察したかのようなタイミングで指摘をやってのけた白石くんは、もはや天の声のように思えてならない。やけに至近距離で聞こえた気がするのは、きっと私の耳が恐怖のあまり冴え渡っていたせいだろう。だって、それくらい今の私は怯えきっている。よく分からない白い布の後ろに隠れることに徹しているせいで、広間にいる他の四天の人達の様子を伺うことは出来ないくらいに。

それにしても、自ら「多少は制御出来ると思う」と言っていたのは本当だったみたいだ。注意を促した白石くんの効果は抜群で、コハルユウジコンビさんは「はいはーい」と少し残念そうにしながらも素直に聞き入れたみたい。えっと、とりあえずはなんとかなったの、かな…?…よくよく耳を澄ましてみれば、なんだか各自解散したようにまたあちこちから様々な話し声が聞こえて賑やかになってきたように思う。と、とりあえずもう無茶振りはされない…かな。なんだかびっくりして何が何だか分からないままだったけれど、どうも白石くんのお陰で収集がつきそうだ。

…白石くんがいてくれて本当に助かった。思わず安堵の溜め息をついてしまう。…それにしても、確かに「頼っていい」と言われたけれど、まさか早速お言葉に甘えることになろうとは。もしかしたら白石くん自身も驚いているのかもしれない。なんだか申し訳ないなあと思いつつ、ずっと俯いてばかりだった顔をようやく上げて瞳を開けてみる。そこでふと、視界の上の辺りに白石くんの後頭部と思われる色素の薄い髪を発見してしまったものだから、ピシリと思考回路が停止した。呆然と、そのまま3秒ほど凝視する。

「(………あ。えっと…)」

なんでこんなに近いんだろう、なんて妙に冷静な心の住人がツッコミを入れつつ、ふと顎を引いて正面にある白い布に目をやってみる。3秒ほどじっと見つめた後、また少し顔を上げてみる。やっぱり白石くんの頭があった。毛先がぴょこんと外側にはねているけれど柔らかそうな髪がなんだか可愛らしい。そこからもう一度、ゆっくり視線を降下させてみる。そして判明した。白い布と思っていたのはワイシャツで、私は白石くんの広い背中の後ろにずっと隠れていたらしい。そう理解した瞬間、何かがぼんっと爆発した。

「(そ、そういえば私!突然の振りにびっくりして!思わず!白石くんの後ろに隠れたんだった…っ!)」

しかも怖くてずっと目を瞑りながら俯いてたから全く気が付かなかったけれど、どうやらかなりの至近距離で彼に頼っていたらしい。密着とまではいかないけれど、半ばしがみつくように背中にくっついていたことが判明した。顔を上げればすぐ彼の襟足が見えて、それに驚いた心臓は大きく跳ね上がる。し、しらいし、くん。同い年なのに私と違って身長も肩幅もあって、そういえばなんだかにおいも私とは違う気がする、ような、気がする。汗とも香水とも違うなんだか優しいにおいは、まるで彼自身を表しているようだった。

どうやら親切だと思っていた彼も、やっぱり男の子だったらしい。お、おとこの……。…ど、どどど、どうしよう。お、男の子がこんなに近くにいて、わ、わたし。わたし。自覚したらまた心臓がすごいことになってきちゃったんだけれど、ど、どうしよう。

訳が分からずぐるんぐるん頭が困惑し始めると、更に何がなんだか分からなくなる。事態が読み込めない。どうしたらいいのかひたすら必死に考え込みながら、ほとんど無意識に右手に力が入った──ところで何かを掴んでいるような感覚があることに気が付いてふとそこに視線を落とし。そこでまたとんでもないことに気が付いた。…私、白石くんの右腕ずっと掴んでた。どうやら温かいと思ってたのは白石くんの肌のぬくもりだったらしい。これには思わず頭が真っ白になる。

「…えっ」

半袖の白いワイシャツから伸びる長くて引き締まった右腕は間違いなく白石くんのもので、それに触れるこの手が彼の温かい体温を教えてくる。…えっ、えっ。私、なんで白石くんに触ってるんだっけ。事の発端すらもう分からなくなって、広間に入るときは必ず前の人の腕を掴まないといけないんだったっけ、なんて的外れなことを考えてしまう。人はパニックになると思考回路が麻痺して、凄まじく馬鹿げていることも本気で考えてしまうらしい。

「えっ。…あっ…あう…、」

ど、どうすればいいんだろう。すぐにこちらが手を引けばいいだけの話なのだけれど、なぜだかそれが出来ないでいる。…じ、自分の体って、どうやって動かすんだっけ。わからない。私にはもう、カラカラに乾いてしまった喉から時から動揺した小さな声を漏らすことしか出来ないみたいだ。そんなふうに背後で時よりよく分からないことを途切れ途切れ言っているからか、相変わらず腕を離そうとしない私を不審に思ってか、それともたまたまタイミングが合っただけなのか、白石くんは私の様子を伺うように振り返ってきたものだから、また和太鼓のように心臓が高鳴る。思わず息を飲んだ。

「…、堪忍な。平気か?」
「うあっ…!」

うっかり間抜けな声が出てしまった私の喉は、それ以外何も口にすることが出来ない。きっと白石くんは優しいから、私が怯えているだろうと思って気遣ってくれた、ただそれだけだったんだろう。しかしただでさえ至近距離だったことも手伝って、今まで一定の距離を保ってきた私には随分刺激が強すぎるテリトリー内で彼の顔を発見してしまった。ぶつかり合う視線も普段ならすぐさま逸らしてしまうはずなのに、なぜだか今はそうすることが出来ない。まるで吸い込まれるように彼の瞳を見つめてしまって。

「…あ、」

どうやら流石の彼も予想外の近さに驚いたらしい。しかし一瞬目を丸くした白石くんからぽつりと漏れたこの一言で、私もこれは幻覚というわけではないらしいということを改めて実感してしまった。お陰でかあーっと一気に体温が上昇する。もしかして私、蒸発でもしてしまうんじゃないだろうか。そう思わずにはいられない。…でもね、頭がショートしたせいで瞬きの仕方すら忘れてしまったというのに、瞳は潤んで仕方がないの。

し、しらいしくん、あ、あの、ち、ちかい、よ

せめてそう一言言えたら良かったのに、喉がカラカラで声にならない。…白石くんやっぱり綺麗な顔してる。肌もきめ細かいし、目もまっすぐですごく綺麗だ。…じゃなくて!ようやく我に返った私は、もはやどこを見たらいいのか分からなくなって目が泳いでしまう。そうして無意味に誰も何もない斜め右下の床に視線を固定した。

「あ、あのあの…っ。わ、わたし…っ!」

ようやく音に変換出来た頃には頭の中は完全なるパニック状態で、先程とはまるで比べものにならないほどひどく慌てていた。…ど、どうしよう私白石くんの腕握って顔近くてうわあってなってだってあのほら白石くんが白石くんがしらいしくんがしらいしくんがしらいしくんが。もう視線を外したというのに、顔を逸らしても目を瞑ってみても、どうしてだろう、至近距離で見た彼の顔が焼き付いて離れてくれないの。視界の隅にふと彼の腕を掴んでいた右手が目に入り慌てて手を放してみるけれど、やっぱり羞恥の勢いは収まってない。むしろ動揺は広がるばかりで、思わず一歩後ずさり距離をとる。そして慌てて口を開いた。

「あ、あのあの、ご、ごめんなさい…っ!」

思わず腕を掴んでしまったことや至近距離となってしまったことに対しての謝罪の言葉を口にするもやっぱり本人の顔を見ることは出来なくて、だから私は火照る頬を抱えたまま俯いたまま、少しでも熱が引くことを祈ることしか出来ない。は、はずかしい。いくら驚いていたからって、必死になっていたからって、隠れることに夢中だったからって、ほぼ初対面に近い男の子の腕をしがみつくように掴みながら背中にひっつくって。…私、馴れ馴れしいにもほどがある。

「(ど、どうしよう)」

いくら白石くんが優しくていい人だからって、流石にこれは、ない。きっとない。ばくばくと騒がしくしている心臓がそう全否定している。それにいつも目を逸らしてばかりだったし、(誤解は解けたとはいえ)近寄らないでなんて言ったり散々失礼なこと仕出かしてきちゃったし、遂に嫌われちゃったかな。馴れ馴れしいって思われたかもしれない。…どうしよう。もしそうだったら、なんか、なんだか。…いやだなあ。…それもこれも全部自分のせいなのは間違いのだけれど。

でもだって私、あんな、あんな近くで男の子の顔見たの初めてで、だからどうしたらいいのか分からなくなっちゃって。あの、私。…ど、どうしよう。…私も見上げていたとは身長差があったからはたから見たら目と鼻の先というわけではなかったかもしれないけれど、それでも私の体を燃やさせるには十分の威力を持っていた。そんな私に、白石くんも大量にコップが乗って重たいトレーを早く置きたいだろうにそんな素振りを一切見せることなく私に声を掛ける。

「なんでが謝るんです?むしろ謝るのはこっちの方ですわ。驚かせてしもてすんまへん」
「いやあの、わ、私のほうこそ、えっと…」
「けどほら、小春もユウジも、別にのこと驚かしたろ思てやったわけやなくて。なんちゅーかその…根っからのお笑い体質っちゅーか、四天宝寺のお約束っちゅーか…つまりはそういう歓迎精神からなんですわ」
「…えっ」
「え?なに?」
「あ、いやあの、な、なんでもない、です…!だ、だいじょうぶ!」

ぶんぶんと慌てて首を振って否定する私の声は随分とひっくり返っていて、それがまるで「なんでもなくありません私動揺しています」と言っているようで情けない。でも、だって、私。…いつの間にか俯いていた顔はそのままでそっと視線だけ上げ、こっそり白石くんの様子を盗み見してみる。彼はやっぱりけろりとした様子で首を傾げていた。

「?どうしました?」

不思議そうにしながらも優しく微笑みかけてくる白石くんにまたも心臓を急かされてしまった私は、慌てて「なんでもないです」と否定する。そして今度こそしっかり俯いて顔は上げない。…なんだろう、なんていうか。…びっくりしちゃったの、私だけなのかな。少なくとも白石くんはなんとも思ってないみたい。さっきと全然変わらないし。…わたしだけ。…どうしてだろう、なんだか。

「(すごく恥ずかしい)」

いっそ、泣きそうになってしまうくらいに。…別に彼は私をからかった訳でもないし、ましてや先程のコントで場を盛り上げようとした彼ら2人組に恥ずかしい思いをさせられたというわけでは全くないはずなのに、きゅうっと胸が締め付けられてしまう。男の子が苦手すぎて反応しすぎたっていうのが恥ずかしいのかな。男の子が苦手だってことは白石くんも知ってくれているし、それに彼の性格上、きっと笑いはしないだろうけれど。

「(…私、もしかして意識しすぎなのかなあ)」

白石くんはきっと男女分け隔てなく接することの出来る人だろうから、私みたいにいちいち反応したりしないんだ。いいなあ、すごいなあ。……………。なんだか自分が何を考えればいいのかよく分からなくなってくるのはなんでだろう。

「(……しらいしくん…)」

ちらっと盗み見るように彼をこっそり見上げてみると、ちょうどタイミングが合ってしまったのかはたりと彼と目が合ってしまう。そうしてまた安心させるかのような優しい笑みを返してくれるものだから、慌てて顔視線を落とした。かあっと全身が熱くなる。なんだか見られるのが無性に恥ずかしくなって、俯いたまま前髪をぎゅうっと引っ張って必死に目を隠した。

…白石くんは優しくて、気遣いも出来て、言葉遣いも柔らかくて、だからきっととってもいい人なのに。──やっぱりすごく、きんちょうする。どきどきしちゃう。目も合わせられないや。どうしよう、どうしよう。色んな感情が混ざり合ったせいでじわっと滲んでくる目から涙が溢れないよう、必死になって耐えるしかない。…わ、わたし、

「──邪魔っすわ」
「…ひゃあっ!」

突然背後から声がしたものだから、私の心臓は大きく飛び跳ねてしまった。慌てて振り返ってみれば、迷惑そうに眉間に皺を寄せていた黒髪の男子が立っている。い、い、いつの間に…!ばくばくと騒がしい胸を押さえながら口籠る口で必死に「ご、ごめんなさい…っ!」と慌てて紡ぎ出してみるけれど、目の前の彼は一瞬目を合わせた以外、特にこれといった反応は見せてくれなかった。な、なんだか気まずい。

…どうやら考え込んでばかりいたせいで、全く周りが見えていなかったみたい。背後に四天の人がいただなんて全然気づかなかった。…白石くん同様、他に席外してた人がいたなんて。しかしなるほど、確かに広間の出入り口に私がいたままでは彼は中へ入ることが出来ない。邪魔と言われるのも納得だ。またやってしまったと恐縮しつつ隅に寄ろうと何気なく顔を上げると、ふと視界に大量のピアスが飛び込んできてしまったものだから大変だ。体は急激に硬直し、蛇に睨まれた蛙が再来してしまった。

「(さ、さ、さっきのひとだ…!)」

玄関のとき!すれ違った!あの、目の、鋭い…っ!ど、どど、どうしよう。あわあわとうろたえていると、ピアスの彼はそんな私を鬱陶しそうな目で睨んでくる(ように思えた)。お陰でますます身を縮めていると、それに気付いたらしい白石くんが黒髪の少年に少し厳しい口調で注意する。

「財前、口の聞き方には気ぃ付けなさい」
「はいはい」

聞いているのか聞いていないのか分からない返答をするピアスを大量に開けている男子はザイゼンくんというらしい。そしてそのまま面倒臭そうな顔をして私と白石くんの横をすり抜け広間に入ってしまった。…び、びび、びっくり、した。なんだかさっきとは違う意味で生きた心地がしなかったと未だにどこか騒がしさを残している胸に手を当てていると、白石くんが申し訳なさそうな顔をして声を掛けてきた。

、堪忍な。後でよう言うときますんで」

そう申し訳なさそうに謝る白石くんは、きっと部員が失礼な物言いをしたと思っているのだろう。私は慌てて「ううん。あの、大丈夫です」と手を左右に振って否定するけれど、逆に彼はそれを私が気を遣っていると捕えてしまったらしい。わ、私、本当に気にしてないのに。ちょっとびっくりしちゃっただけなのに。…白石くんは責任感というか、そういうのが強いんだな。…ちゃんとしてるんだなあ。すごいなあ。なんだか尊敬の眼差しで白石くんを見てしまう。…さっきのことがあったから、余計に顔は見れないけど。

「今の財前っちゅー2年なんですけど、その…口が達者なとこあって。けどちょっと不器用なだけで、本人も悪気があったわけやないんです。…悪く思わんとってください」
「あ、はい。だってほら、私がぼーっと突っ立ってたのは事実だし、きっと私が彼だったら端に寄ってほしいって思うだろうし。だからだいじょうぶです」
「…ほんま?」
「う、うん」

そう言ってこくりと頷くと、白石くんは「そう言ってくれると助かるわ」とどこか安堵したように小さく笑う。なんだかその姿が眩しくてやっぱり直視出来ない私はひょろひょろと視線を下に泳がせふるふると首を振ることしか出来ない。さっきのことも引きずって、白石くんに見られるとやっぱり妙に照れ臭くなって、恥ずかしい。…それに白石くんはとてもいい人だけれど、やっぱり男子は慣れないっていうのもあるのかな。それを誤魔化すように気付かれない程度に唇を噛んで、緊張に縛られてばかりの私を必死に押し殺そうとした。…どきどきする。


20120414 時々敬語が崩れてます。あとヒロインが持ってた布巾、一見ログアウトしてるように見えますがちゃんといます存在感がないだけで←