
どうしよう。
白石くんの背中を眺め、そんなことを考えた。…結局。あれから彼の手からコップの乗ったお盆を奪うことは叶わず、結果私はほぼ手ぶらのまま彼の後ろを追いかけるように廊下を歩いている形に収まってしまった。(まあ「ほぼ」と言っても、私の手元にはローテーブルを拭く布巾くらいしかないのだけれど)お客様なのになんだか申し訳ないなあと思う反面、この状態をなんとかして抜け出せないものかと必死に頭を回転させていた。白石くんのことはもう1年近く聞かされ続けてきたから初対面という感じはしないのだけれど、やっぱり男の子という事実は変わらなくて、だから私は口を頑なに閉じたままでいる。本当はもっとお話してみたいけれど、やっぱりしたくないような。…自分で自分がよく分からない。
「(……だ、だって、き、きんちょう、する)」
どきどきと高鳴る胸を押さえつつ、やっぱり会わないままだったらよかったかもしれないなんて今更なことを考えてみる。ずっと話の中の住人で、どこか遠い国の人だったらよかったのかも。だけど家じゅうの時計を過去に巻き戻してみても現実の時は戻らないことを知っているから、もはや後悔するしか出来ないのだ。受け入れるしかない。思わず足取りが重くのろのろとゆっくりになってしまう。
どうしたらいいのかなあと深い溜息をひとつついたまさにその瞬間、突然ぼふんっと顔面に何かがぶつかった。お陰で「はうっ、」と間抜けな声が漏れてしまう。…いや、正確にはぶつかったのではなく自分から突っ込んだと言った方が正しいのかもしれない。どうやら前方の白石くんが立ち止まったらしく、そしてそれに気付かなかった私は彼の大きな背中に顔をぶつけてしまったらしかった。しかも正面衝突。…なんて恥ずかしい。
「…す、すみません…!ぼーっとしてて…」
やってしまった。鼻を手で覆って謝罪の言葉を送ると、白石くんはそこで初めて気が付いたとでもいうかのように心底驚いて振り返り、「あっ、こっちこそすんません、急に立ち止まってしもて…」と謝り返してきた。どうやらあまりに私が着いてくるのが遅いから、様子見しようと先に進むのを中断してくれたらしい。そこへ何も気付かずぼうっとしていた私が直撃したということだった。…申し訳ないというか、恥ずかしいというか。なんか痛いからとかとは違う意味で顔を隠したい気分かもしれない。だけど私があまりに鼻のてっぺんを押さえる手を一向にどかさないものだからきっと白石くんは勘違いしたのだろう、困惑した彼の優しい瞳が私を捕えた。
「怪我とかしてへんとええんやけど…平気です?」
「(うあっ…!)」
心配そうな顔で覗き込んでくる白石くんに、思わず爆発してしまうかのような感覚に捕らわれた。ち、ちか…っ!近い!途端にじわあっと視界が潤むように歪んで、私の体温は急上昇する。思わず目を逸らした。どうしようどうしようどうしよう。完全に頭がショートしてパニック状態に陥った私は、何を言おうなんて考えるよりも先に慌てて口を開いた。ぎゅうっと固く目を瞑って、これ以上来ないでくれと言わんばかりに彼と私の間に右手を乱入させながら。
「だ、大丈夫!大丈夫ですからあの、ち、近寄らないでください!」
パニック状態の頭が放った言葉に、はっとした。私、今すごい傷つけるようなこと言った。言い方も何もかも間違えている。いくら動揺していたからって私、ひどい。これじゃまるで拒絶したみたいじゃないか。恐る恐る白石くんを見やると、彼は半ば放心するかのように驚いた顔をして「…すんません」と小さく呟いた。そのときの白石くんは遠慮しがちに笑ってくれていたけれど近寄るなと言われて傷つかない人なんていなくて、だから私もすぐにそれが作り笑いだということに気付くことが出来た。だって、例えば私も白石くんに近寄るなと一喝されたらきっと落ち込んでしまう。初対面だとかそんなの関係なく、まるで自分の存在を否定されたように思えて。
「あ、あの。す、すみません。違うんですそういう意味じゃなくて、あの、えっと」
なんだか白石くんのどこか悲しそうな顔を見ていると、こっちまで悲しくなってしまうのはなんでだろう。おろおろとうろたえながら必死に言い訳を口にしようとするけれど、どうしてだろう、うまく言葉にまとめることが出来ない。お陰でなんだか墓穴を掘っているだけのように見える気がして、だから私はますます泣きたくなってしまった。だけど泣いたって現状は悪化の一途を辿るだけだと分かりきっているから、必死に我慢するしかない。
「あの、近寄らないでっていうのはあの、別に白石くんが嫌いとかそういう意味じゃなくて、あの、あのね、えっと、違うんです」
どうしよう、また泣きそうになってきた。本当は彼の目をしっかり見て話さなきゃいけないのにそれすら出来ないなんて、私は白石くんに失礼なことばかりしているような気がしてならない。これでは本当に白石くんに嫌われてしまうかもしれない。でも、それだけは避けたい。ぎゅっと布巾を握りしめた。私、きっと白石くんと仲良くなりたいって思ってる。白石くんの話を聞かされ続けてきたときから、きっとずっと。だって私、こんなに男の子のことに親近感を持って「どんな人なんだろう」って思ったの、きっと生まれて初めてだ。
「あ、あのあの。わ、笑わないで、聞いてくださいね…!」
だから私は決死の思いで弁解を口にする。目は相変わらず泳いでしまうし顔は熱くなってくるし言葉もどこかぎこちないけれど、それでも私は言わなければいけない気がした。だけど私があまりに必死だからだろうか、白石くんは相槌をひとつ打って、じっと言葉の続きを待ってくれている。やっぱり白石くんは優しい人だった。「あの、えっと…」言わなきゃ、言わなきゃ。恥ずかしくて逃げ出したくても、言わなきゃ。勝手に慌てて、傷つけて、そのまま放置しちゃ絶対にだめだ。ひたすら自分に言い聞かせ、ぎゅっと目を瞑る。そして意を決してようやく口を開いた。
「あの、わたし、あの…っ!……っ、お、おとこのひと、苦手なんです…っ!」
言った!言えた!ほっとした私は安堵のあまり溜息をつくけれど目の前の白石くんは「え、」だとかなんだとか少し間抜けな反応をしてくるものだから、やっぱり呆れられてしまったのだろうか。どきどきしながら様子を伺うと、それに気付いたのか彼は「え?あ、ああ、男子、苦手なんですか。そ、そうなんやあ」と何故か少し片言な返事を寄越す。やっぱりおかしな子だと思われたかもしれないけれど、でも男子が苦手というのは変わりようのない事実なのだから仕方がない。
「は、はい…。えっと、だからあの、びっくりしちゃって。…だからその…下らない理由で不快な思いをさせてしまって、えっと、その…すみませんでした」
「あ、いやそんな、気にせんといてください。俺のほうも変な勘違いしてしもて…。…なんや、俺てっきり…」
「てっきり…?」
「あ、いえこっちの話ですわ。気にせんといてください」
「はあ…」
首を傾げてみるけれど、白石くんは詳細を口にする素振りは全く見せようとしない。…なんだろうなんて考えながら、もしかして嫌われてると思われちゃってたのかな・なんて想像してみる。なんだかありえそうな話で若干笑えない気もするけれど。でも誤解は解けたのかな。よかった。安堵からふと白石くんを見上げてみるとタイミングが良かったのか悪かったのか視線がぶつかってしまった。なんだか気まずくてすぐ目を逸らすしかない私はやっぱり小心者のようだった。
「…けど、良かったです。嫌われとらんで」
ふとそんな白石くんの声が降ってきた気がしておそるおそる見上げると、彼は綺麗に微笑んでいた。思わず見とれそうになるけれど恥ずかしさの方が勝ってやっぱりすぐに目を逸らしてしまった私に、彼は優しく笑いかける。彼は男子が苦手と知ったからか、さほど気にしているような雰囲気は一切見せなかった。
「流石に会って早々嫌われるっちゅーのはあんま気持ちのええもんやないですし。それに俺ばあちゃんやオサムちゃんからずっと話聞いとったんで、ほんまはずっと会うてみたいなあ思っとったんですわ。…なんて、きもい思われるかもしれんけど」
「い、いえそんなこと!わ、私もです!」
「え?」
「え?…あ、いやその、」
とんでもなく恥ずかしいことを口走ってしまった気がして、なんだかかあっと顔が熱くなった。もしかしたら今度は別の意味で誤解を与えてしまうかもしれないと、慌てて口を開く。「あのあの、なんていうか」だけど出て来るのはやっぱりどもっている声だけで、なかなかまともに話せない。変な子だって思われちゃってるかも。緊張が高まって指が冷たくなってきた。どきどきと小さな鼓動が隠せない。どうしよう、こんなに男の子と話すのは初めてだから緊張してしまう。かっこわるいところ、見せたくないのに。
「あの、おばあちゃんが、白石くんのことよく話すんです。あ、四天の人のことはよく話すんだけど、白石くんは特に。それで、今日白石くんに会ったとか、こういうことしてくれたとか。言ってて。だから、あの、きっといい人なんだなあって、えっと…だから…あの…」
なんだか話せば話すほど恥ずかしくなってくるのはなんでだろう。最初はちらちらと彼の顔を盗み見るように顔を上げていたはずなのに徐々に視線が俯いて、今では体の前でぎゅっと布巾を握りしめていた己の両手に視線を固定してしまっている。ずっとどんな人なのか気になっていた人が目の前にいて、しかも今話せているというのに、私は何をやっているのだろう。でも、だって、白石くんの目はどうしても見れない。どうにも恥ずかしくて。
彼の前にいると、私はいつも目が潤んできてうまく笑えなくなってしまう。心臓が騒がしくて恥ずかしくて、いつだって彼を見ることが出来ない。おばあちゃんやオサムちゃんがいつもお世話になってますって微笑んでお礼を言いたいのにそれすらも出来ないなんて、なんて奥ゆかしいんだろう。白石くんはこんなにも親切にしてくれているというのに、なんだか申し訳なくなってくる。
「(でも、いっしょだったんだ)」
会えて嬉しいって思ってるの、私だけじゃなかったんだ。その事実がくすぐったくて、だけど嬉しい。例えお世辞だったとしても、そう口にしてくれただけで嬉しかった。私はもしかしたら自分でも気づかないうちに白石くんに懐いていたのかもしれない。第三者が聞いたら、顔も知らない相手だったくせにおかしなことだと笑うだろうか。でもそれくらい、男子が苦手な私も白石くんに対してだけは親近感を持っている。それは認めざるをえない。だけど目を見て話せない。やっぱり、緊張してしまって。
「……ほんま?」
ぽつりと呟かれるように聞こえた白石くんの声に、ふと顔を上げる。すると目の前の彼はどこかぽかんとしながらもう一度「それ、ほんまなん?」と口にした。ずっとかたくなに敬語を使ってきていた白石くんが、初めて砕けた口調を口にした瞬間だった。
彼には心を読むなんて超能力は備わっていないのだから、真意を問われているのは私が白石くんに対して親近感を持っているという点ではなく、会いたいと思っていたということについてだろう。だけどそれらは全てうっかり口から漏れてしまった、いわば言うつもりのなかった言葉たちだっただから、改めて聞き返されると途端に恥ずかしくなってしまう。「あ、えっと、あのあの」とまた口どもってしまう私は、きっと耳まで顔を赤く染め上げているに違いない。だけどそんな私を目の前にしてもなおじっと逸らすことなく注がれてくる白石くんからの視線に、思わず身体が熱くなった。
「う、うん……」
もはやこくんっと頷くことしか出来ない。それが私の精一杯だ。…でも、なんだか妙な雰囲気になっちゃった気がする。私まで敬語を使わなくなってしまったからなのかな。私は顔を熱くしながら落ち着きなくそわそわとするしかないし、一方の白石くんは白石くんで視線を落としてトレーに乗ったコップ達をどこかぎこちなく眺めている。そんな彼を視界の隅で捕えながらも、私も私で白石くんの顔を見ることが出来ない。だけど急に沈黙が訪れたものだからなんだか気まずくて、必死になって頭を回転させ何か話題はないかと考えてみるものの、一向にそれらしいものは浮かばない。だけどこういうのは考えるより行動してみたほうが意外に浮かぶかもしれないとよく分からない持論を展開し、ごくりと息を飲んで口を開いた。
…あの、
しかしどうしたことだろう。お互い全く同時に口を開いたせいで、見事なハモリを披露してしまった。まさかこんなコントみたいなことが現実に起こるなんて思ってもいなくて驚いてしまう。慌てて「し、白石くんからどうぞ」と声を掛けると、「いやここはレディーファーストて決まっとりますやん」と遠慮されてしまった。お互い一歩も引かないものだから全く話が進まない。そもそも私も黙り込んでしまったこの場を打破するべく声を掛けただけなのだから、実際用なんてこれっぽっちもなかったりする。でも何か言わないと間がもたない。5秒ほど沈黙を置いた後、再び口を開いた。
じゃあ、
…また見事にデュエットをしてしまったとはなんということだろう。(まあ正確に言うなら白石くんは「ほな」だったけれども)まさか二度も同じことが起こるとは思っていなくて、だから私は緊張が解けたように小さく笑ってしまう。それは白石くんも同じようで、どこか照れた笑いを見せたから、私はなんとなく気恥ずかしくなって唇を軽く噛んだ。どうも私、顔に締まりがない気がして。
「えっと…せや、今日学校あったんですよね?何時頃来たんです?」
「あ、ついさっきです。学校終わってすぐ新幹線に乗ったので」
「そうなんですか」
「はい、そうなんです」
「そっか、そうなんや」
「は、はい」
なんだかむずむずとくすぐったい気分になってくるのはなんでだろう。苦手なはずの男子とお話してるからなのかな。それとも白石くんみたいにかっこいい人が目の前にいると緊張しちゃうからなのかな。もっとお話してみたいけれど何を話したらいいのか分からなくて、だから会話はすぐに集結してしまう。再び静まり返った廊下で向き合ったまま、2人は俯き気味にまた黙り込むしかない。もしかしたら白石くんにつまらない奴だと思われていそうで怖くなった。これだから男子嫌いは嫌になる。…いや、別に苦手なだけであって嫌いというわけではないから男子嫌いと称すのは少し違うのかな。
会ったら話してみたいこととか確かにあったはずなのに、それが嘘みたいに出てこない。どこかに溶けてしまったのだろうか、そう思わずにはいられない。でも白石くんの話をずっと聞きすぎたからかな、逆に話題が見つからないの。テニス部なんですよねなんて今更すぎることを口にするのはおかしいし、逆に初対面の会話繋ぎとしてよく使われる、兄弟はいますかとか血液型は何型ですかなんて話題も、あえてこの場で聞くようなことじゃない気がした。でもあまりに白石くんの最近あったことを口にしたら気持ち悪がられるかもしれないし。
…ど、どうしたらいいのだろう。ぐるぐると頭を抱え考え込んでいると、まるでそれを察したかのように白石くんが声を掛けてくれた。思わず過剰に反応してしまったのは見逃してほしい。だけどそんな私に気にする素振りを全く見せない彼は、むしろ一層優しく笑って言った。
「…多分今日の部員はしゃいどるんで、なんかあったら遠慮なく俺に言うてください」
「は、はい。ありがとうござい、ます」
「そんな礼言われるようなこととちゃいますよ」
そう言って、白石くんはまた小さく笑った。やっぱり、いいひとなんだろうな。おばあちゃんが口癖のように言っていたように、きっと優しくて気遣いの出来る人なんだ。さっきも同じことを思ったけれど、やっぱり今もそう実感してしまう。白石くんはいいひとだ。
「…それに金ちゃんに会えて喜んどるみたいだから、よう絡んでくると思いますし」
「えっ」
どうしよう、これは私の聞き間違いか何かだろうか。そう思わずにはいられないくらい、かあーっと全身が熱くなる。名前、呼び捨てで呼ばれちゃった。以前電話越しに言われたことはあったけれど、いざ目の前で言われるのとはまた違うみたい。だから過剰に反応してしまった。男の子に面と向かって「」と呼ばれるのは初めてで、なんだか自分の名前がいつも聞き慣れている響きとはまた違うような気がして、だからどうしたらいいのか分からなくなる。本当はなんでもないように流すのが一番正しい反応なのかもしれないけれど、そんな高度な選択肢、もとより私には存在しない。それに白石くんがあまりに自然に「」と呼ぶから、こんなに反応してしまった私がおかしいように思えてしまって。
「え、何…?」
何か問題があるようなことを言ったかと首を傾げる白石くんは無意識にかもしれないけれどまた整った顔をずいっと近付けてきくるものだから、私は今にも爆発しそうな心臓を抱え慌てて一歩後退し、彼との距離を確保する。そんな私を不思議そうに捕える白石くんの瞳はやっぱり疑問の色で溢れかえっていた。ど、どど、どうしよう。
「あ、あの。な、なまえ……」
どうしよう、きっと私、ぎこちない顔してる。だってこんなにも頬が引きつっている。決死に絞り出した告白は随分と弱々しく頼りない。動揺していますと自ら言っているようなものだった。でも4月の電話のときにはこんなに動揺しなかったのに、おかしい。だけど私があまりにも反応してしまうものだから、白石くんも気付いたのだろう。「あっ」と小さく声を漏らし、言われて初めて気が付いたと言わんばかりの反応をした。
「すんません。いつもばあちゃんやオサムちゃんがって呼んどるのを聞き慣れとるもんやから、つい癖で。…あ、せや。そういえば電話のときも俺、勝手に呼び捨てしてましたよね。…馴れ馴れしくしてしもて、すんませんでした」
「あ、いえそんな!だ、大丈夫です!」
ブンブンと大げさなまでに手を振ってしまう私は、やっぱり緊張と動揺が混ぜ合わさった妙な心地のままだった。「言われ慣れてないからちょっと驚いただけで、あの、だから別に、嫌なわけではないんです。ほんとに」となぜか無意味に早口になりながら伝えると、白石くんは「ほんまですか」とどこか安堵したような顔をしてきたものだから、私は慌ててこくこくと頷いた。
「えっと…ほな、で」
「は、はい…」
俯き加減でこくりと頷いてみたけれど、内心はどきどきと心臓が高鳴っていた。どうしよう。私、今まで人伝えでしか知らなかった人と会っていて、お話して、って名前で呼ばれちゃうんだ。なんだか慣れない展開が甘酸っぱくてくすぐったい。ほんとに私、男の子とこんなふうにお話するの初めてだ。どきどきしている私に白石くんは「ほな改めて自己紹介しまひょか」と仕切るように声を掛けてきたから、思わず姿勢を正してしまった。白石くんは律儀にぺこりとお辞儀をする。
「…じゃあ改めまして、白石蔵ノ介です。よろしゅう」
「あ、えっとえっと、です。あの、こちらこそよろしくお願い、します」
向かい合って会釈し合う私達は、なんだか妙な感じがした。初めましてだけど実質上初めましてではないし、一度だけとはいえ電話越しに言葉を交わしたことのある私達には初対面という単語はしっくりこない。やっぱり私は彼の目を見て話せないけれど、どうしても落ち着きのない口調になってしまうけれど、それでもなんとなく、仲良くなれる気がした。根拠や確証はどこにもないけれど、なんとなくそう思ったのです。
20120226 ありがちな展開だけれど、少しは白石√に入れただろうか…!