「刹那ちゃん!ちょっとかくまって!」
慌てた声が聞こえると同時に突然開いた部屋の自動ドア。 何事だと顔をやってみると、そこにはやはり予想通りの人物がいて。 そして彼女はこちらが許可を与えてもいないと言うのに、いつの間にか部屋へ入って来てた。 そしてドアが閉まるのを見届けると、・はふうと溜息をひとつ。 …溜息をつきたいのは俺の方だ。
巻き込まれた少年
「……………今度は何をしたんだ」
こんなことは日常茶飯事だった。 言うならば彼女は、トラブルメーカーなのだ。 何かしでかす度に逃走し、関係ない人物を巻き込んでいく。 本人は無意識なのだから、余計にタチが悪い。 そして俺も、何度被害に遭ったことか。 なのでが何をしたか、そんなの大体想像がついた。 「どうせ誰かの食事を横取りでもしたんだろう」「違うから!」 その顔はまるで「そんなことをする訳ないじゃないか」とでも言う顔だが、実際俺はつい数日前にその被害に遭ったばかりだ。 信用なんて出来やしない。
「や、あれはつい出来心で…!
あまりにも気まずい空気を和ませようと…ってそれはどうでも今良くて!
実は私、ロックオンに追われているんだよ!」
「…今度はロックオンのを食べたのか」
「だから違う!私は何もやってないってばー!」
理由もなく追いかける訳がないだろう。 しかもその相手はロックオンだ。 どうせの自覚がないだけで、何かしでかしたんだろう。 しかし俺とは特別親しい訳ではないのだから、他のクルーの所に行ってくれれば良かったものを。 …何故俺の所に逃げ込んでくる。 「だって部屋が1番近かったんだもん!」 …そんな理由で巻き込んでくれるな。
「刹那!来てないか!?」
また何の前触れもなく開けられたドアから顔を出したのは、今しがた話題に出て来たロックオンだった。 …成る程、確かに彼はを探しているらしい。 そして当のはと言うと、つい先程まで隣にいたのにも関わらず素早く身を隠したらしい、もうそこにいなかった。 (もはや動物並みの反射神経だ) 一体どこへと見回してみると、ロックオンの所からではちょうど死角となるだろう所に身を潜めていた。 そして必死な顔をして口の前に人差し指を当て、「言うな」とジェスチャーメッセージを寄越している。 ……………。
「なら、そこのベットの陰にいる。用があるなら連れて行ってくれ。
俺を巻き込むな」
「な!せ、刹那ちゃんの裏切り者お!」
「本当にいた!!」
「あっ!し、しまった!」
見つかりたくないなら黙っていれば良いものを。 無駄に素直というか、馬鹿正直と言うか。 そんなは、遂に鬼に捕まったらしい。 がしりと後ろ襟を掴まれ、ずりずりと引っ張られている。 (宇宙間なので引きずられはしていないが) しかしも未だ抵抗する意思がいるらしく、じたばたと暴れている。 まるで犬か猫のようだ。 …それにしても、なんて諦めの悪いんだ、は。
しかし、これでようやく部屋が静かになる。
「じゃあな刹那。巻き込んで悪かったな」
「…ああ」
全くだ。
ドアは再び開き、2人はここから姿を消そうとしている。
はようやく無駄な抵抗だと悟ったのか、先程よりは大人しい。
「刹那ちゃんの馬鹿あ!裏切り者お!ガンダムは、人に優しくしなきゃ駄目なんだぞー!
もう私がガンダムになってやるー!」
さて今の騒動は一体何だったのだろうと思った矢先、の雄たけびが響き渡り、その瞬間にドアが閉まった。
が。
…俺がガンダムだ。
080630 (遂に子どもが鬼に捕まったらしい)