今日は4月の1番初めの日。 だからと言って世間では、本当に嘘を付いているのだろうか。 もっとも今は春休みで学校には行かないし、デート以外ほとんど家を出ようとしない私はそのことを知るよしは無いのだけれど。 それでもその、この日本ではほとんど消え失せている風習に乗っ取って、私は大好きな貴方に嘘を付くとしよう。 そこでもし私が「大嫌い」と言ったなら、貴方は私の嘘を見破れますか。 もし、私が、
「寿君と同い年だったら、良かったのになあ」
私、あともう1日遅く生まれてくれば良かった。 そう小さくぽつりと呟いたなら、名を上げられた寿君は始めきょとんとしていて。 でもすぐに「またその話?」と苦笑いした。 うん、この話、ずっとずっと前からしてるもんね。 もうこれで何度目になるのだろう。 でもさ、私にとっては切実な問題なんだよ。 目の前のテーブルに置かれたバースデーケーキに刺さったロウソクは小さな炎を揺らしている。 その数を何度数えてみても、やっぱり寿君より1つ多い。 昨日までは確かに同じ数だったのに。 同じ14歳だったのに。 その事実が、哀しい。
「折角の誕生日なのに、何言ってるの?」
寿君はそう優しく笑うけれど、私、いつも思うんだ。 どうして4月1日生まれは、4月2日以降生まれた人より1つ先輩扱いになってしまうのだろうと。 学年の区切りが4月2日からって、なんでだろう。 一体誰が決めたんだろう。 政治のお偉いさん? だったら今すぐ改正して下さい。 訂正して下さい、今日、今、ここで。 そのせいで私、ずっと悲しい想いを抱いているのです。 新学期が始まれば、私と寿君は違う学校へ通うことになってしまうのです。 どうして彼はまだ中学生なのに、私は高校生にならなくてはいけないのですか。
「…だって私、やっぱり寿君と同い年が良かったんだもん」
「…、」
「そしたら同じクラスになれたかもしれないのに。修学旅行や成人式だって、一緒に行ける。
きっと今より思い出いっぱい作れたのに」
目の前にはおいしそうなワンホールのショートケーキ。 私のだいすきなお店のだ。 その上には「ハッピーバースデイ」と書いてあるチョコレートが乗っている。 寿君がお店の人に頼んで書いてもらったなんて、考えなくても分かった。
「…なんて、大丈夫だよ、寿君。 同い年だったらって、嘘だから。 今日、エイプリールでしょう」
悪戯に笑って、すぐにロウソクに点(とも)された明かりを吹き消した。 ふいに暗くなる視界。 握り締めた寿君の左手。 泣きそうな私。 …寿君がお祝いしてくれるというしあわせな現実があるというのに、これは贅沢な悩みなのでしょうか。 「でもやっぱり、これだけは言わせて。、お誕生日おめでとう」 まるで私を慰めるように、貴方の優しい言葉が耳元で囁(ささや)かれた。
080401(学年の区切りネタ。間違ってたらごめんなさい)