本当は、「今日ちょっと付き合って」って言われたとき。結構驚いていたりする。というより、ちょっとどきっとしてしまった。あまりにもびっくりしてしまったから、「どこへですか」という質問も声がちょっと裏返っていたかもしれない。そんな私だったから、うっかり期待してしまったのも否定出来ない。
…いや、何の期待って、その、そりゃ男の人から付き合って欲しいところがあるなんて言われたら、ほら、やっぱり、思っちゃうじゃないですか。ちょっと、わくわくしちゃうじゃないですか。もしかして私のことって考えちゃって、意識しちゃうものじゃないですか。やっぱり。それなのに連れて行かれたのは子ども達とかくれんぼするためって。かくれんぼって。いや、子どもはすきだけれどそういう問題じゃなくて…!
「(…いや、本当に想像していた展開になっていたとしても、それはそれで反応に困るのだけれど…!)」
あれっ、私期待してたんじゃなかったの?いやいやそれは言葉の綾というもので、別に私は沖田さんのことをそんなふうに思ってるわけは…!でも「今日付き合って」って声を掛けて、凄く嬉しかったのは何故だろう?あれ、嬉しかった?嬉しかったの私?……駄目だ、なんかもう分かんなくなってきた。色々ごちゃごちゃに散らかった頭の中は、もう収集がつかない状態みたい。…もう考えるのはやめよう。どうせ予想とは全然違った訳だし。…何故だろう、思わず溜息をついてしまう。
「…もしかしてさ」
少し考え込むような間があった後、彼は口を開いた。もしかしたら今の溜息聞こえてしまったのかもしれない。どうなのだろう?今沖田さんがどんな表情をしているのか顔を逸らしている私には分からないから、何も予想出来ないけれど。しかしこの声はいつも通りのひょうひょうとした音だった。ちらりと左隣にいる彼を見やる。すると沖田さんは、やっぱりけろりとした顔で言った。
「恋心でも告げられるのかも、なーんて期待した?」
「…!?そ、そんなこと…っ!」
「しっ!」
「(えっ!?)」
まるで最後まで言わせないとばかりに突然彼の大きな手で口を塞がれてしまうものだから、訳が分からず全身が岩のように固まった。なのに全身は急激に熱くなり、汗が滲み出てくる。え?何この展開…!え、なに?なに…!お、沖田さ…っ!?
「…いい子だから、静かにしてようね」
そう耳元で小さく囁く彼は自分の口の前に指を1本当てて、台詞のとおり騒ぐなと言っている。でも、えっ、そんな無茶な。こ、この状態で落ち着けと言われても…!か、顔近い!近いです…!男の人とこんな至近距離なの初めてなのですが私…!そもそも、そんなにも騒ぎそうに見えるのかな…。だとしたら、その原因は全て今のあなたにあるということに気付いていないのだろうか、私を後ろから抱くように口を覆っている彼には。…うう、左耳に彼の髪が触れてくすぐったい。
「あれえ?今たしかにねえちゃんの声がしたとおもったのにー」
この声は確か、さっきかくれんぼの鬼になった子?…そういえば今かくれんぼしてるんだった。どうやら私の声を聞きつけてやってきたらしい。なるほど沖田さんが口を塞いできたのはこのせいか。そういえば結構大きい声だったかもしれない。その子に気付かれない程度にこっそり様子を伺ってみると、やっぱり茂みに隠れている私達を探しているらしく、不思議そうにきょろきょろとしている。…お願いだから見つけないで!この状態で発見されたら確実に私達のことを誤解されて色々と困ることになるから…!
「(ど、どうしよう…!お、おきたさん…!)」
どうしたらいいのか分からず、ひとまずもぞもぞと動いて彼の様子を伺うことにする。しかしすっかり忘れていた。沖田さんの顔がすぐそこにあること。さっきなんかよりもずうっと近くに彼がいることに高鳴る鼓動。一向に離れる素振りを見せない彼は、私の視線に気付いて綺麗に微笑む。思わずその瞳に吸い込まれる感覚に陥った。…お願いだから見つけないで。だってね、私。もう少しこのままでいたいだなんて、そんなことを思ってしまったから。
20110415 (沖田さんに口塞がれるところは脳内スチル展開余裕でした←)