親愛なる友へ
バレンタインはお菓子会社の陰謀。 そう分かっていても、ついついそれに乗ってしまう女の子は、日本全国にどれくらいいるのだろうか。 とは言っても今や主流となっているのは友チョコならぬ友達同士で交換するチョコレートだ。 更にこの私立薄桜学園は今年度の4月に共学になったばかりの元男子校。 私を入れても、女子生徒は2人しかいない。 なんてことだ。
ともかくそういうわけで、バレンタインなんて行事は去年まで縁の遠い学校だったのだ。 …だからだろうか。 クラスの男子達にクッキーをあげたらとても驚いていて、「そういえばバレンタインなんて行事あったな」という、なんとも可哀想な声もちらほらと聞こえた。 しかしやはり嬉しいことに代わりはないのか、彼らはみんなとても喜んでくれて、クッキーも、「おいしいおいしい」と言って食べてくれました。
「あんなに喜んでくれるなら、作った甲斐があったかな」
えへへ、と嬉しがっていたら、隣の席の斎藤くんは「そうか」と小さく相槌を打ってくれた。 いつも冷静さを持ち合わせているがゆえにあまり感情が顔に出ない彼だけれど、本当はとても人情深い人だということを私は知っている。 興味のないであろう話題でも、いつも嫌な顔ひとつしないで最後までしっかり聞いてくれるのだ。 だから私は、何でも斎藤くんに話してしまう。 昨日の夕飯がだいすきなグラタンだったとか、この間ペットショップで可愛いにゃんこがいたとか、そういう他愛の無い話。 それから、私の恋の話もしたりする。
「あ。良かったら、斎藤くんも食べてね。いつもお世話になってるお礼…って言ったらあれだけど」
そう言ってクッキーを差し出したら、斎藤くんは「菓子の持込みは校則違反だ」と相変わらずの表情で注意した。 …とっても今更だなあ、なんて思ってはいけない。 でもそうか、そういえば彼は風紀委員だったっけ。 相変わらず真面目だねえと苦笑すると、しかし斎藤くんは無言で「校則違反である菓子」を受け取った。 「だからこれは、俺が預かる」 …こういうのを、世間様では「つんでれ」と呼ぶのだろうか。 そんなことを考えつつ、「是非そうしてやって」と答えてやる。 なんだか斎藤くんらしいなあ、なんてことを思った。
100221 3110さんは、是非クラスメイト(むしろ隣の席)に1人欲しい逸材ですね分かります。ていうか名前変換なくてごめんなさい