あれ。私と斎藤さんってどういう関係なんだろう。恋人ってわけでもない…し…?でも友達とはまた違うような…。そもそも私は斎藤さんがすきなわけだから、これは片想い?でも斎藤さんもまんざらという訳でもないと思うのだけれど…。でも決定的なことは言われてないしなあ。……………。

『…俺は気に留めていない女の相手をしてやるほど、優しい男じゃ無い。なのにそんなことに気付かないで身を引かれては、困る』

あれは…い、一応遠回しにOKをくれたと考えて良いのかな…。いや、でも気に留めていない女っていう言い方も微妙だし…。でも身を引かれちゃ困るって言ってるから、期待はしていいんだよね?でもいまいち決定的な事はないし…。斎藤さんの素振りから見て、手応えはあると思うのだけど…。

え?これは何?どうすればいいの?そもそも斎藤さんの好みってどんなの!?



「…で、僕に相談しに来たってこと?」

もはやお約束とも言えるこの行動にも、僕はすっかり慣れてしまったように思う。だからいつからか、こんなふうにちゃんと並んで甘味屋の団子を頬張るなんてことも、決して珍しいことではなくなった。しかし僕自身それは決して嫌ではなかったし、むしろ妹を見守る兄のような感覚だったから、こういうときはとても楽しい。それに彼女は非常に面白いのだ。色んな意味で。

「だって、こんなこと聞けるの沖田さんしか思い当たらなくて…」

まあ確かにそうかもね。そもそも君、友達いないもんね。「あ、酷いなあ。ちゃんといますよー?なんかよく分かんないけど凄い人が!…まあその人もなんかよく分かんないけど忙しいみたいで、なかなか会えないですけど」…なんか胡散臭そうな奴が友達なんだね。そもそもよく分からないって連呼してるけど、それって友達って言えるの?…まあ良いけどね、君がそれで良いんなら。「……と!とにかく!こんなの沖田さんにしか話せないんです!斎藤さんとも知り合いですし!だから相談乗って下さい!」…うーん。

「まあ頼りにしてくれるのは嬉しいけど、僕、そういう相談別に得意じゃないんだよねえ。左之さん辺りが適任だと思うけど」
「?佐野さんて誰ですか?」
「…あれ。会ったことなかったけ?」
「ないです」

きょとんとした顔で言ってくるから、どうやら本当に知らないらしい。てっきり知り合いだと思っていたから少し意外だった。とりあえず名前を出しておいてそのままっていうのも可哀想だから、「新選組幹部の人だよ」と簡潔に教えてあげることにする。すると、「へー、幹部!じゃあ沖田さんや斎藤さん同様お偉いさんなんですね!」とにこやかに笑うから、一応ねと頷いておいた。「…ああ、でも左之さんね、近寄っちゃ駄目だよ。あの人狼だから。ちゃん食べられちゃうから」「成る程!女の敵ってやつですね!」

「まあ冗談はさて置き、つまりはそんなわけだから、初めて会った女からいきなり恋愛相談に乗って下さいなんて言われても相手にされる訳ないじゃないですか」
「ま、そりゃそうだ」

まあ左之さんもそういう話嫌いじゃないし、なんだかんだいって兄貴肌だし、喜んで歓迎しそうだけどなあなんて考えながら茶を啜る。…あ、そっか。これまでの経緯全部話さなきゃいけないから、色々思うところがあるのかな。要するに彼女が言ったとおり、ちゃんが相談出来るのは僕くらいしかいないわけだ。「それで、僕に何が聞きたいの?」まどろっこしいことは嫌いだから単刀直入に言ってやると、「そう、そうなんです!」と、まるで良くぞ聞いてくれましたと言わんばかりの顔をした。

「私、斎藤さんはおしとやかな人がすきなんじゃないかって思うんですけど!沖田さんはどう思われますか!」
「…一応聞くけど、どうしてそういう結論になったの?」
「え?いや、なんとなく」

なんとなく。そんな曖昧な理由なのに、そこまで自信満々な顔されても。でも一くんそんな行動的じゃないし、ちゃんみたいな子が丁度良いと思うんだけど。そもそも一くん君にベタ惚れでしょ。…と、言ってやりたかったけど、本人がまだ続きがあるようだったから自重して耳を傾けることにする。

「あと私、料理も出来ないし!お、お米…!お米すら炊けず…!向こうの世界じゃ無洗米入れて水入れてスイッチ押すだけだったのに、なんで!なんでこんな火加減とか火にかける時間とかその他色々複雑なことになってるんですか!?そしてなぜ電子レンジやスライサーがない!?」
「いやあ、そんなこと僕に言われても」

料理が得意じゃないのは僕も一緒だけど、どうやら彼女の世界では、色々と便利になっているらしい。よく分からないけど。それにしても米すら炊けないとは、僕以上だね。…まあ僕の場合、毎回シンが残ってるだの、はたまた柔らかいだのと料理オタクな一くんやらぶつくさ言われるけどさ。ついには「あんたは盛り付けだけしてろ」とか言われたけどさ。

でもこういうの、個性があって良いじゃない。毎回違う味だからこそ、料理ってのは美味しく感じるんだと思うんだよ。(…って言ったら一くんは「…同じ味を食べてみたいものだな」とか嫌味言ってくるものだから、本当ヤになっちゃうよねまったく)「それとそれと!」僕がほんの少し物思いにふけっている間にも、留まることなくぽんぽんと言葉が飛んでいる。どうやら彼女は、まだ悩みの種を持ち合わせているらしかった。ああごめんね、ちゃんと聞いてるよ。なあに?

「ここでは女性のほうからアタック…あ、いや、積極的にいくのはないって聞いて…だから、その…なんていうか…」
「ふうん。まあ確かにね」
「!や、やっぱりそうなんですか…!ご法度なんですか!」
「いや、そういう意味じゃなくて」

確かにちゃんはとにかく直線型というかなんというか、回りくどいことはせずにとことん突っ走る子だった。こんな子、この京どころか日本全国探してもなかなかいないんじゃないかなあ。まあそこが面白い所なんだけれど。そういえばこことは違うところから来たって言ってたし、色々と違うことが多いのかなあ。例えば…ええと…なんだっけ。さっき言ってたでんしれんじ?とか、彼女がよく着てるセイフク?とか。(まあ今日は普通に着物着てるみたいだけど)…それにしても。この子はそんなことを気にしてたのか。…ちゃん、なんか色々考えてたんだなあ。僕ですら全然分からなかったから、こういうことには鈍い一くんなんて気付いてすらないんじゃないかな。思わず溜息ついちゃうよ。

「何悩んでんのか知らないけど、元気で人懐こいのは君の長所でしょ。ちゃんはちゃん。それで良いじゃない」
「…そ、そういうものなのかなあ…」

あーあ、しょぼくれちゃって。これじゃまるで淋しさのあまり耳をたらす子犬だなあ。それにしても、いつも元気な彼女が弱音を吐くなんて珍しい。一くんと何かあったのかな・なんて思いつつ、しかし本人が何も言わないから僕は何も聞かないことにする。そもそも女心と秋の空って言うくらいだし、ただの気まぐれかもしれないし。「ほら、僕の団子もあげるから。元気だしなよ」そう言って半ば強引にみたらし団子を口元に持っていってやると、彼女は少し間を置いた後、なんの躊躇いもなく食らいついた。そのまま団子を受け取り、もごもごと口を動かしている。彼女は甘いものがとてもすきだから、少しいつもの調子が戻ったようだった。こういうとき、なんだか小動物でも餌付けしている気分になって非常に面白い。

「…でもやっぱり私、斎藤さん好みの女の子になりたいです!すきって言われたいです!」
「じゃあいっそやってみれば良いんじゃない?ちゃんの言う『おしとやかな女の子』。まあ君素直だからね、すぐボロが出ると思うけど」
「…わ、私もそう思います…だからその、どうしようかと…」
「よく分かんないけど、女の子って大変なんだね」
「そうですよ!すきな人のためなら必死なんです!」
「ふうん。そういうもんなんだ」

ちゃんも女の子なんだなあなんて思いつつ、すっかり温くなってしまったお茶を啜った。必死だとか大変だとか言うわりには彼女はとても生き生きとした目をしているから、なんだかんだ言って楽しんでるんだろうなあ。こういうとき、彼女は一番輝いてる気がする。こんなふうに落ち込ませたり元気にさせちゃうなんて、一くんも相当贅沢な悩み抱えさせてるよね。…屯所に帰ったら、からかってやろうかなあ。…あ、なんだか凄く楽しそう。

「…あ。じゃあそんなちゃんに良いものあげちゃおうかな」
「えー、なになに?何ですか?あ、またお団子?」
「ううん、はずれー」

とりあえず、その後もちゃんとまったりお茶を楽しみました。


20100709(ヒロインの言う、「なんかよく分かんないけどすごい人」=風間です。詳細は拍手夢にて。そしてヒロイン変換では左之=佐野。…ていうか沖田さんにお団子あーんされるとか…ちくしょう羨ましい←←)