恋文って、えっ?要するにラブレター?って、こと?えっ?えっ?何これどっきり?訴状じゃなかったの?「ほ、本当ですか斎藤さん」予想外すぎる代物に驚いて彼に確認するも、斎藤さんは「!あ、ああ…」とか言って、さっと視線を逸らされた。(!これで今日2回目…!ショックすぎる!)なんだかもう色んな意味で泣きそうになりながら、沖田さんから返してもらった文を改めて見てみる。ずっと訴状だとばかり思っていたけれど…。「…こ、恋文…」うわ。何か言葉にしたら急に実感が沸いて恥ずかしくなってきた!ていうか私、告白されたのか…!(うわー!初めて!)

「…あれっ?でも…誰に?」
「名前は書いてないみたいだけど、多分その渡してきた人じゃないの?ちゃん、会ったんでしょ?」
「は、はい…でも、てっきり訴状だと思って動揺してたから…その、そんなに覚えて…ないです…。交流のない方でしたし…」
「ふうん。覚えられてないだなんて、可哀想な奴だね、この相手もさ。ちなみにこの人、君の眩しい笑顔とやらに落とされたらしいよ。魔性の女だねちゃん」
「ま、魔性って失礼な…!私はいつだって斎藤さん一筋です!」

そう宣言してぱっと斎藤さんを見てみると、相変わらずぼーっとしていて反応はない。…あれ?いつもなら顔真っ赤にして「そういうことは簡単に言うな」だとかなんだとか言ってくるのに今日はないぞ。なんだか斎藤さんらしくないなあ。「斎藤さん?どうかしたんですか。…あ。もしかして具合でも悪いんじゃ!」「あ、い、いや!なんでもない。…気にするな」…は、はあ…。

でも恋文かあ。悪い気はしないかもしれない。…なのに私、訴状だと勘違いして取り乱しちゃって…。うう、恥ずかしいのと申し訳ないのとが混ざって変な感じ。まあ渡されたときにラブレターだと分かっていたら、それはそれで動揺するだろうけど。

「なんでもこの人、婚約者と祝言をあげるんだってさ。『それでもどうしても気持ちを伝えておきたかった』って書いてあるし、最後に君に言っておきたかったんじゃないの」
「しゅうげん…?えっ、好きな人がいるのに私に恋文…?えっ?なんだか…複雑な気分です…」
「そう?別に、好きでもない婚約者と婚姻を結ぶってのは珍しいことじゃないでしょ。婚姻は家の存続のためにやるもんなんだから」
「えっ!そうなんですか!すきだから夫婦になるんじゃないの!?」
「…君がいたところって、本当幸せなところだね」

ええ!本当に!だって結婚って、そういうものなんじゃないの?だって好きでもない相手と結婚して何が嬉しいの?すきだから一緒に人生を歩んで行きたいと思って結婚するんじゃないの?だってこれって政略結婚ってやつなんじゃ。…ああそうか。だからラブレターをくれた人は名前は伏せたまま私に渡したんだ。結婚前に変な噂が立って、祝言がおじゃんになるのを防ぐために。そうまでして伝えてくれたのに。

「(……なんだか…)」

悪いことしちゃったなあ。せっかく決死の思いでくれたラブレターを訴状なんかと勘違いして、しかも彼の顔すら覚えてないなんて。せめて名前くらい聞いておけば良かったかなあ。もし私が逆の立場なら、きっと凄く悲しくなる。「別に、君がそう落ち込むことじゃないと思うけどなあ」あまりにもしょぼくれていたからだろうか、沖田さんがいつもの口調で声を掛けてくれた。

「厳しいこと言うようだけど、恋文送って来た相手がどんな人生を歩もうと、君には全く関係のないことだよ。それに、別に知り合いじゃないんでしょ?おまけに名前の記入はなし。はっきり言って、この文は彼の自己満足だね。…放っておけば良いじゃない」
「は、はい…まあ、そうなんですけど…」
「…君ってさあ、実は鈍くて凄く手間の掛かる子だよね。つまり、君にそんな顔させたくてこれ渡してきたわけじゃないんだから、もしちゃんが彼に申し訳ないと思って言うのならそれはお門違いってこと。むしろ普段どおりにしてたほうがよっぽどその人のためだと思うけど?」
「(あれ?これは…)」

もしかして沖田さん、励ましてくれてるのだろうか。いつも通りのどこかそっけない物言いだけれど、もしかして私のこと心配してくれてるのかな。そんなこと一言も言わないけれど、そうなのかな。「…何?」じっと沖田さんを見ていたせいだろうか、何か言いたいことでもあるのと言わんばかりの顔で言われてしまった。

「…ううん!なんでもないです!ありがとうございます沖田さん!」
「何の話?」
「何でもない話ですよ!」
「…訳が分からないんだけど」


20110405 (若干沖田さん√に行かせてみました^q^次のお話は会話のみです。飛ばしても話の展開には支障が無いので、苦手な方は飛ばしてくださいね)