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先輩は良い先輩だ。友中の生徒会長で人望も厚く、生徒会の仕事がありながらも野球部の、マネージャーとしての仕事もしっかりとこなしている。面倒見もいい。後輩達からも慕われてるし、実際に俺もすげえ慕っている…と、思う。あー、…あと、姉貴も、すんごい懐いてるみたいで、この間しっぽでもあれば振りそうな勢いで先輩と話しているのをたまたま廊下で見かけた。(気づかれたら気づかれたで厄介…つか面倒だから声はかけなかったけど)とにかく、まあ、語り出すと色々きりがないのでこの話はここで終わっておくが、そんな人だから、…みんなが慕うような人だから、つまり、先輩はもてるのだ。それも、かなり。 この間も呼び出しくらったかなんかで部活遅れてきてたし。しかしその呼び出した相手にご愁傷様と言うべきか、先輩本人は超がつくほどの鈍感女でそれを告白だと思ってないのだからどうとも言えない。『なんかさー、付き合ってとか言われたんだけど、何処へ?って感じだよね!』とか真顔で言っていたのには少しそいつに同情した。どんまい、誰か知んねーけど。「ふーちゃん!」そんなことを練習中考えていると後ろからそう呼ばれ、誰かと言うと俺のことをこんな呼び方しるのはひとりしかおらず、ため息つきつつ振り返ると思いっきりタオルを顔に押し当てられた。べちゃっと気持ち悪い音がして冷たく濡れたタオルが顔を冷やす。って、何やってんだこの人……もとい、今まさに俺の中で話題になってた先輩だ。 「おつかれ!はい、ちゃんと汗ふいてね」 「もうちょいましな渡し方ないんすか…つか、ふーちゃん言うのいい加減やめてください」 「えー、なんで?可愛いのに」 「男が可愛いとか言われて、嬉しいわけないでしょ…」 呆れたようにそう言えば、「私はかっこいいって言われたら嬉しいけどねえ…」なんて真顔で返されてしまった。いや、女にかっこいいと男に可愛いじゃだいぶ違うだろ。だいたい先輩はからかったり冗談で言うわけでもなく、本気で“ふーちゃん”呼びしてくるのだから厄介だ。俺にどう反応しろと。普通に対応するのもおかしいし。(というか俺、ちゃん付けされるキャラじゃないし)さすがに可愛いは冗談だろうからこっちもはっきり嫌と言わせていただくが。幸い俺は少しだけ先輩を見あげられる身長なので、可愛いって言った仕返し、と言わんばかりに軽くチョップくらわしてやった。ぱすっという、俺のチョップがちゃんと先輩の頭に入る少し間抜けな音がして、先輩が「うわあっ」と声をあげた。 「知りませんよそんなこと」 「いったい…叩くことないでしょ、ふーちゃん乱暴ー。というか冷たーい」 「はいはい叩いたり冷たくしてすいませんでした」 「すんげ棒読みだけど……まあ、よろしい」 「どーも…先輩、ドリンク」 「ん、はいどーぞ。…にしてもふーちゃん、また身長伸びた?」 「身長…?さあ、どうっすかね。最近測ったないんで、どうとも」 「いやー絶対伸びたよ!なんか見上げる角度がきつくなったような気がするのよ」 「先輩が縮んだだけじゃないっすか」 あるわけないでしょー、と、先輩が笑いながら俺の頭…にはさすがに届かないのか(頑張ったら届くような気もするが)、肩辺りをばしんと叩いたところでフェンスの向こう側から「!」と言う声が響いた。2人して一瞬固まる。が、もちろん次の瞬間には俺も先輩もそう言って先輩を呼んだ人物がだれかを理解するわけで、俺はさっさとタオルで汗ふいて水分補給も済ませて、先輩が手に持っているカゴにそれを両方投げるようにつっ込んだ。その間先輩は隣で「はーい何ー!?ちょっと待ってー!」とフェンスの向こう側の人物に向かってそう叫んでいる。この後俺と先輩は少しだけ言葉を交わして、先輩はフェンスの向こう側の人物の元へ走って行ってしまう。いつものよくあるパターン。 「ふーちゃんおっけー?」 「大丈夫っすよ。わざわざありがとうございました」 「いーえ。じゃあ私寿也呼んでるから行くね!のど乾いたらベンチの上にアクエリアスあるから飲んでいいよ、って他の1年生たちにも言っといて」 ひとつ頷くと、先輩は満足そうに微笑んでから「ふーちゃんまた後でねー!」とかなんとか、そのまま重いカゴ片手走って寿先輩のところへ行ってしまった。「…だからふーちゃんじゃねえって…」いったい何回言えばわかるんだあの人は。と、走って行ってしまった先輩の背中に聞こえるはずのないそんな言葉を呟いて、ため息をつく。そう言いながらも本当は、あの呼ばれ方もまんざら嫌なわけじゃなかった。だって俺のことをそうやって呼ぶのは先輩だけで。……、そう思うことで、少しでもあの人のトクベツになろうとしている自分がいたのかもしれない。そんなの、簡単になれるはずないってのに。自分が馬鹿すぎて笑える。特別、とか、ばっかじゃねえの。先輩はそんなつもり欠片もないって自分でもわかってるくせに。 フェンスの向こう側で先輩が笑っていた。ほら、さっき俺に向けられてたのとはまた違う、寿先輩へだけのいわゆるトクベツな笑顔。もちろん先輩の正面には寿先輩がいて、先輩と同じように笑っている。2人は幼馴染だと誰かから聞いた。俺の入る余地なんてあるわけがない。……いや、入るつもりなんて初めからないのかもしれないけど。先輩には寿先輩、寿先輩にも先輩、で、いいじゃないか。お似合いだし。そんなこと最初からわかってたんだ。それでも、忘れるなんてことなくこの気持ちを持ったままなのは、きっと先輩への気持ちのほうがずっと強いから。 …でも、それにしたって俺は、いつまでこんなことを続けるつもりなんだろうか。先輩は鈍いからいいにしろ、寿先輩は先輩に関しては鋭そうだし、絶対いつかは気付かれる。そしたら、俺は、どうするんだ?寿先輩に全部打ち明けてライバル宣言?ばかばかしい。そんなの、寿先輩との関係悪くするだけだろ。寿先輩のことだって、全然嫌いなんかじゃないんだ。認めてるし、すげーいい先輩だし、尊敬してる。だからこそ、先輩と、はやく付き合ってしまえばいいのにといつも思う。本当は思いたくないけど。相変わらず俺の情けなさは健在だった。寿先輩となら、先輩が付き合っても許せると思うんだ。たぶん。それで俺は違う女と普通の恋愛して、いつの間にか先輩のこと好きだったのなんて忘れてしまう。これが理想。あくまで理想なので本当にそうなる可能性はとりあえず現時点ではかなり低い。というか俺自身忘れるつもりないんだからどうしようもない。 「ふーちゃん、こら!さぼってないで練習しなさい!」「颯太、ちゃんとやらないと鬼マネージャーの鉄拳飛んでくるよ」「寿也くんきみ少し黙ろうか」 ばかだよな、先輩も、寿先輩も。俺の気持ち知らないで、そんな風に笑いかけてきてさ。先輩、俺があんたのこと好きだって言ったら、どーせすんごい困った顔するだろ。そんで寿先輩は、俺のこと敵視がんがんの目で見始めるに違いない。から、…………やっぱり、ごめんだ、そんなの。 「そーっすね、鉄拳だけは勘弁したいですし」帽子をかぶり直しながらそう言えば、八つ当たりしてるのか、何言ってるかは聞こえないけど寿先輩の背中を叩いてる先輩がいて。やっぱり、笑っていた。不覚にもじっと見つめてしまいそうになって慌てて目をそらす。あぶねえ。どうにも俺は、あの人の笑顔に弱いらしい。(たぶん全体的に弱いと思うけど) 初めてこんなに人を好きになった。それと同時に、こんなに人の幸せを強く願ったのも初めてだった。俺は先輩が好きだ。ちゃんと、恋愛感情として。でも先輩には寿先輩がいて、まだそういう関係にはなってないにしろ、そろそろ時間の問題だと思う。数年後だって、先輩の隣にいるのは俺じゃなくてきっとあの人だ。そんなこと考えて悔しくないわけじゃない。俺だって今みたいに先輩と寿先輩が話してるのみて現に嫉妬してるし、極力気持ち抑えようとするのにだって苦労している。(まあその分誰にも気づかれてないみたいだけど)だけどやっぱり、先輩のことを考えると絶対俺なんかより寿先輩の方が先輩には合っていると思うわけだ。それなら俺は身を引いたって構わないし、気持ちだって伝えなくてただの後輩で終わってしまっていい。神様は残酷だ。せめて俺があと2年早く生まれてれば、こんな情けないこと言わないで寿先輩と勝負できたかもしれない。恋愛に年齢なんか関係ないって?俺にはたった2歳の差がこんなにも遠く感じるのに。本当、残酷だ。そりゃため息もでるさ。 ただしため息ついて飛んでった分の俺の幸せは、代わりに先輩の幸せになりますように。 「…………あっちぃ…」 春が終わる。もうすぐ先輩たちにとって最後の大会があって、それが終われば先輩も、寿先輩も、引退だ。つまり、もう夏がそこまできている。あの季節は正直言うと苦手だ、けど、嫌いじゃない。顔の火照るのも心臓が音が速いのも、全部暑さのせいにできるから。 君の世界に陶酔 (だけど暑さのせいにする前に、あの人はこのグラウンドを後にしてしまうわけだけど) 080412 朱臣さくら様に葵から一方的に捧ぐってか押しつけます。(ちょっと待て)す、すいませんでしたぁあああああああ!(土下座)え、誰これ誰これーなさくら先輩寿也←颯太な話でした…! なんだこれは!何だこれは!(カオス!!)お、おかしい…いろいろとおかしい…!さくら先輩こんな話し方じゃねえよっていうのあったら言ってやってください そっこー訂正するので…!それにしても颯太が相変わらずロマンチッカー…そしてさくら先輩大好きな…子に…誰ですかこの人?(真顔)とりあえず焼くなり煮るなり好きにしちゃってくれー! 本当さくら先輩大好きだー!そうですよ、彼は。(そして葵も)(どさくさ)駄文すいませんでした!また送り付けたらごめんご!← ではっ!(逃亡) きゃああ!ふーちゃんだ!ふーちゃんだ!
もうニヤッニヤしながら読ませて頂きました!ありがとうあおちゃん!
特に最後の「顔の火照るのも〜」の所とか最っ高に格好良いっす葵大先生!
是非また送りつけてやって下さいな!
…あ、でもお願いだから、本編でふーちゃんの彼女役の子は登場させないでね?
マジで切れますよ?(笑顔)(←) |