「実はね、今日、僕の誕生日なんですよ。」


夜、公園で手を繋いで歩いていると、突然花月がこう云った。

は大好きなたいやきを食べるのを止め、彼を見た。

綺麗な笑顔を浮かべている。


「・・・・ま、まじですか?」
「ええ。そういえば、には云っていなかったですよね」


僕も、さっき思い出すまで忘れていたんですよ。


くすりと笑みをこぼし、花月は笑う。

そんな彼とは反対に、はうつむいた。


「どうかしましたか?
「いえっ・・・、別に、なにもないです・・・。」


手に持っているたいやきの半分を、慌てて口に入れた。


(やばいよ、そんなの知らなかったから、わたし何も用意してないんですけどっ・・・)


内心嫌な汗をかきながら思う。

花月のことだ。きっと、これははかっていたのであろう。


は苦し紛れに、口に入れたたいやきを飲み込みながら顔を上げた。


「・・・・なにか、ほしいものでもある?」


恐る恐る、彼に尋ねる。

花月は策略家だ。こういう手口で、一度ハロウィンの日に騙されたことがある。


には今、花月が閻魔大王のように見えていた。


「そうですね・・・、特に、欲しいものはありませんよ。」
「えっ?そ、そうなの?」


なんだあ、そうなんだあ。へらへらと笑って云いたかったが、心の中でとどめておいた。

ほっと、は安堵したかのようにため息付く。


刹那、繋いでいた手を花月が思い切り自分の方に引っ張った。


は小さく悲鳴をあげ、花月の腕の中に倒れる。


これって、やばくないですか?と、頭の中で同じ言葉が低回する。

は重い頭をあげ、花月を見た。

すると、すっと、両頬に手が添えられた。


「かづっ、」
「静かに。」


云われたと同時に、唇を塞がれた。


「んっ・・、ん・・・」


甘い接吻に、吐息が漏れる。

無意識に、瞳を閉じた。


「ふ・・・、んっ、」


とんっと、彼の胸を軽く叩いた。

ふと、花月の唇がの唇からはなれた。


は閉じていた瞳を開かせ、花月を見る。

すると、花月は微笑んだ。


「帰りましょうか、家に」
「・・・・ばかっ、」


頬を林檎にそめ、むっと顔を膨らませながらは云った。

すると、また花月が笑う。そんな彼に、はため息付いた。


そして、笑った。


「お誕生日おめでとう、花月。」
「ありがとう、。」


寒空の下、二人は手を繋ぎ、また歩き始めた。










©橋野千柚/06.12.27